分散型プラットフォームにおけるガバナンスとステーキングを強く意識したブロックチェーンとして、Tezos（テゾス） はその独自性と技術力で際立っています。そのネイティブトークンである XTZ は、ステーク (ステーキング) による報酬、ガバナンス参加、ネットワーク運営の基盤として使われており、長期保有を志すユーザーも多い資産です。
こうしたトークンを安心して管理・送受信するには、信頼性と安全性の高いウォレットが不可欠です。Trust Wallet（トラスト・ウォレット） はスマートフォン対応のノンカストディアルウォレットであり、秘密鍵 (シードフレーズ) をユーザー自身が管理できるため、XTZ のようなステーキング資産を取り扱うには非常に適しています。
一方で、日本における主要取引所 bitFlyer（ビットフライヤー） も XTZ の取引をサポートしており、国内投資家にとって重要な売買・入出金拠点となりえます。bitFlyer の取り扱いや利点・限界を理解することは、運用戦略を構築するうえで欠かせません。
本稿ではまず Trust Wallet による XTZ の運用方法を説明し、次に XTZ の価格変動履歴 (過去最低および最高)、bitFlyer における XTZ の取扱いと特徴、そして Trust Wallet と bitFlyer を活かした運用戦略をご提案します。
Tezos（XTZ）とは
Tezos は、自己改訂 (self-amending) の仕組みとオンチェーンガバナンスを備えた、分散型ブロックチェーンプラットフォームです。XTZ (ティッカー：XTZ、通称 “tez”) は Tezos ネットワークのネイティブトークンで、ステーキング (Tezos では「ベーキング」とも呼ばれる) やネットワークガバナンス (プロトコルの提案と投票) に使われます。
Tezos は Proof‑of‑Stake (PoS) を採用しており、トークン保有者がステークを通じてネットワークを支えることができます。
また、Tezos 財団はプロトコルの研究や開発支援を継続しており、NFT やスマートコントラクト、DeFi などのエコシステムを拡大しています。
XTZ の価格履歴：過去最低価格と最高価格
XTZ（Tezos トークン）の価格はこれまで非常に大きな振れ幅を示してきました。これは、技術的な進展、投資家センチメント、ステーキング需要など、複数の要因が影響した結果です。
過去最高価格 (All‑Time High)
CoinMarketCap のデータによれば、XTZ の歴史的な最高値は 約 ¥1,414.60 (日本円換算) との記録があります。
この高値は、Tezos の技術的ビジョンやステーキング熱、またガバナンス機能への期待などが市場で強く支持された時期に達成されたものと考えられます。
過去最低価格 (All‑Time Low)
同じ CoinMarketCap の情報によると、XTZ の最低値の一つは ¥48.51 (日本円換算) に相当する水準でした。
この価格帯は Tezos の知名度がまだ低かった初期段階や、ブロックチェーン市場の全体的な調整局面と一致する可能性があります。
最近の価格動向
最新のリアルタイム価格として、LBank のデータでは XTZ は 約 $0.5449 (米ドル) 程度に位置しています。
また、Toobit のチャートでも価格帯は似た水準で推移しており、過去のピークからは大幅に調整されたレンジでの安定化傾向が見えます。
これらのデータは、XTZ が過去の高値から落ち着きつつあり、ステーキングや長期保有などを視野に入れた資産構築が現実的になっていることを示しています。
Trust Wallet による XTZ の使用・保管・送受信
Tezos (XTZ) を Trust Wallet で安全に管理し、必要に応じて送信・受信を行う方法や注意すべきポイントについて解説します。
Trust Wallet の利点
Trust Wallet はノンカストディアル型ウォレットであり、ユーザーが秘密鍵 (シードフレーズ) を自己管理できます。これにより、取引所に預けておくことのリスク (ハッキングや運営リスク) を回避できます。
さらに、Trust Wallet はモバイル (iOS／Android) に対応し、直感的な操作性を備えています。多くの暗号資産 (トークン) を一つのアプリで管理できるため、資産の整理や運用が非常に効率的になります。
Trust Wallet の公式サイトでも Tezos ウォレット機能が紹介されており、秘密鍵の保管やバックアップ、セキュリティ対策が明文化されています。
XTZ の登録および管理
Trust Wallet に Tezos (XTZ) を追加する場合、アプリ上で「トークンを追加 (＋)」機能を使い、必要に応じてカスタムトークンとして登録します。Tezos はネイティブ通貨なので、アドレス形式やネットワークは Tezos の仕様に合ったものを選ぶ必要があります。
追加後、ウォレットに残高が表示され、入金・出金・ステーキング (delegation) などが可能です。
XTZ の受け取り (入金)
Trust Wallet で XTZ を受け取るには、ウォレット内で Tezos (XTZ) を選び、「受け取る (Receive)」をタップします。表示されるアドレス (Tezos アドレス) をコピーして、送金元 (取引所や他ウォレット) に指定して送金を行います。
アドレスが正しいか、チェーンが Tezos であること、またウォレットが対応しているかを必ず確認してください。
XTZ の送信 (出金)
送信 (出金) の手順は以下の通りです：
- Trust Wallet で Tezos (XTZ) を選択
- 「送信 (Send)」をタップ
- 宛先アドレスと送付量 (XTZ) を入力
- トランザクション確認画面で手数料などをチェック
- 内容を確認し、送信を実行
送信後にはトランザクションがブロックチェーンでブロードキャストされ、エクスプローラ (例えば Tezos ブロックチェーン向けのビューア) で TXID 等を確認可能です。
ステーキング (Delegation) と報酬
Tezos では “ステーキング (ベーキング)” に似た仕組みがあり、Trust Wallet でもいくつかの “ベーカー (baker)” にデリゲート (委任) することで報酬を得ることが可能です。ただし、Trust Wallet の古いバージョンや設定によってステーキング/デリゲーション機能が不安定になるという報告もあります。例えば、Reddit 上では次のような声があります：
これらはウォレットバージョン、委任先のベーカー、最小デリゲーション量などに起因する可能性があります。そのため、最新アプリを使用し、信頼できるベーカーを選ぶことが重要です。
また、アンステーク (委任解除) のタイミングや報酬の受け取りスケジュールもベーカーやネットワークの状況によって異なるため、慎重な運用が求められます。問題が発生した場合には、Tezos 専用のステーキングビューア (例：baking‑bad や TzKT など) を使ってデリゲーション状況や報酬を確認することが推奨されています。
セキュリティ対策とリスク管理
Trust Wallet で XTZ を管理する際の基本的なセキュリティ対策は以下の通りです：
- シードフレーズ (リカバリーフレーズ) は紙や金属などのオフライン媒体に記録し、安全場所に保管する
- アドレス入力ミスを防ぐため、送金先アドレスはコピペ後に必ず目視で確認
- Trust Wallet アプリは常に最新版に更新する
- 不審な DApp や外部リンクへのウォレット接続は避ける
- ステーキング (デリゲーション) を行う際は、ベーカー選択時に信頼性 (手数料率、履歴) をしっかり確認する
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介
XTZ を運用・売買する際に bitFlyer を利用できるかどうかを理解することは、戦略を立てるうえで非常に重要です。
bitFlyer の基本概要
bitFlyer（ビットフライヤー）は日本国内における大手の暗号資産取引所で、金融庁への登録・認可を受けて運営されています。日本円による入出金が可能であり、販売所形式を通じたアルトコイン取扱を提供しています。
また、顧客資産の管理にはコールドウォレットを使った分別管理が行われており、安全性への配慮も十分です。
XTZ の bitFlyer における取り扱い
bitFlyer は 2020年12月8日 に、国内取引所として初めて Tezos（XTZ） の取り扱いを開始しました。
発表当初はアルトコイン販売所 (マーケットメイク型) による取扱で、新規取扱開始を記念したキャンペーンも実施されました。
つまり、bitFlyer を通じて日本円で XTZ を購入・売却することが可能であり、国内ユーザーにとってアクセスしやすい方法の一つです。
bitFlyer の強みと制約 (XTZ を軸にした観点)
強み は、国内ユーザーに対する信頼性、法制度順守、日本円入出金の利便性、安全な資産管理などです。これらによって、初心者から中長期保有者まで安心して利用できるプラットフォームとなっています。
一方、制約 としては、販売所形式での取扱が中心であることが多く、ユーザー間マッチ (板取引) の流動性や価格優位性が限定される可能性があります。また、取引所に資産を預けることには常にハッキングリスクや経営リスク (カウンターパーティリスク) が伴うため、完全依存は避けるべきです。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：XTZ を軸にした視点
Tezos (XTZ) を保有・運用する観点から、Trust Wallet と bitFlyer の比較を行うと、それぞれ異なる役割と利点が明確になります。
Trust Wallet は自己管理型ウォレットとして、秘密鍵をユーザーが保持するため、高い安全性と自由度を提供します。ステーキング (デリゲーション) や長期保有、将来的なネットワーク参加を目指す場合に最適です。また、モバイルアプリで直接入出金・送受信できる利便性も魅力です。
ただし、自己管理には責任があります。アドレス誤入力、送金ミス、ステーキング設定ミス、シードフレーズの紛失などが起きうるため、慎重な運用とセキュリティ管理が不可欠です。
一方、bitFlyer は国内で非常に信頼性が高い取引所です。日本円での購入・売却、法制度順守、安全管理がしっかりしており、短期売買や利益確定などの用途には非常に適しています。ただし、ステーキングなどネットワーク参加の観点では自己管理ウォレットとの併用が必要です。
運用戦略および提言
Tezos (XTZ) を効果的に運用するには、以下のような戦略が考えられます。
まず、Trust Wallet を中核とした自己管理型戦略 を基本とします。XTZ をウォレットに保管し、ステーキング (デリゲーション) による報酬獲得を目指します。これは長期保有 (HODL) およびネットワーク参加という観点から非常に理にかなったアプローチです。
次に、bitFlyer と併用する戦略 を検討します。日本円での購入や売却を行う際には bitFlyer を使い、その一部または全量を Trust Wallet に移動させて自己管理に移行する方法です。これにより、流動性 (取引所) と安全性 (自己ウォレット) を両立できます。
さらに、中長期参加型戦略 を採用することも有効です。Tezos の技術ビジョン (自己改訂ガバナンス、ステーキング、スマートコントラクト) に共感しつつ保有し、将来的なプロトコル変更やネットワーク成長を見据えて参加する姿勢を持つことで、単なる投資以上の価値創造を狙うことができます。
セキュリティ面では特に注意が必要です。シードフレーズのオフライン保存、ウォレットアプリの定期更新、信頼性の高いベーカーの選択、不審なリンクや DApp への接続回避などを徹底してください。
結論
XTZ (Tezos) は、ガバナンス機能とステーキング (デリゲーション) 機会を提供する非常に洗練されたブロックチェーン資産です。過去の価格変動を見ても、大きな成長ポテンシャルがあったことがうかがえますが、現在は調整局面にあるとも評価できます。
Trust Wallet を利用することで、XTZ を自己管理下に安全に保管し、ステーキングやネットワーク参加を通じて価値を長期的に享受することが可能です。一方、bitFlyer は国内で信頼性の高い拠点として、ZT を売買する際に便利なチャネルを提供しています。
そのため、XTZ を取り扱う際には、Trust Wallet を中核とした自己管理型運用 と、bitFlyer での売買を併用したハイブリッド戦略 が最も現実的かつ効果的なアプローチと言えるでしょう。
