はじめに
近年、Web3 や DeFi の進展にともなって、新興トークンの数が急増しています。その中で Walrus（WAL） は、Sui ブロックチェーン上に構築された分散型データストレージおよびアプリ開発プラットフォームに関連するトークンとして注目を集めています。WAL を保有・運用するには、自分で秘密鍵を管理できるウォレットが不可欠です。モバイルに対応したノンカストディアルウォレットである Trust Wallet（トラスト・ウォレット） は、そのような用途に非常に適した選択肢となります。
一方、日本国内で多くのユーザーを持つ暗号資産取引所 bitFlyer（ビットフライヤー） は、資産売買や管理の拠点となりますが、WAL に関する取り扱いには注意が必要です。本稿では、まず Trust Wallet を使った WAL の管理・送受信方法、次に WAL の価格履歴、bitFlyer の基本情報および WAL の取り扱い状況、最後に Trust Wallet と bitFlyer の比較と運用戦略を詳しく解説します。
WAL（Walrus トークン）とは
Walrus（WAL） は、Sui ネットワーク上に構築された分散型データストレージプロトコルおよびアプリ開発プラットフォームに関連するユーティリティトークンです。Web3 アプリケーションは WAL を使って、チェーン上に大きなデータファイル (画像、動画、音声など) を書き込んだり、読み込んだり、スマートコントラクト経由で管理したりすることが可能です。CoinMarketCap によれば、WAL の総供給量は 5 B（50億枚）で、循環供給量もその一部が流通しています。
Walrus の設計には「チェーン上で大規模データを扱う」という前提があり、中央集権型ストレージでは難しい柔軟性と耐障害性を目指しています。アプリ開発者にとっては、ファイルストレージやデータ運用のコストを分散型の形で提供できるインフラとして魅力があります。
WAL の価格履歴：過去最低・最高値
WAL の価格推移をみると、かなりのボラティリティを伴ってきたトークンであることが分かります。
CoinMarketCap のデータによれば、WAL の 過去最高値 (ATH) は ¥135.12 (日本円ベース) に達していたことがあります。
一方、過去最低値 (ATL) は ¥12.08 と非常に低いレンジまで下落した期間もあるようです。
現在の WAL の価格 (24時間変動を参照) は、たとえば CoinMarketCap によれば ¥30～32 円付近で取引されており、過去の高値からはかなり下がっている水準です。
これらのデータから、WAL はユーザーや投資家にとってリスクを伴う資産であり、一方でデータストレージや分散型アプリケーションという実用的なユースケースを通じて将来的な成長を狙える可能性も秘めているトークンだと言えます。
Trust Wallet による WAL の管理・送受信
次に、Trust Wallet を使って WAL を保管し、送受信する際の方法と注意点を述べます。
Trust Wallet の基本と利点
Trust Wallet は iOS・Android に対応したノンカストディアル型ウォレットで、ユーザー自身が秘密鍵 (シードフレーズ) を管理できます。これにより、自分の資産を取引所に預けず、安全に自己管理することができます。また、多くのトークン (ERC‑20、Sui 対応トークンなど) に対応可能で、直感的な操作ができるインターフェースを持ちます。
自己管理型ウォレットは、取引所リスク (ハッキング、破綻など) を回避できる点が大きな強みです。
WAL トークンの追加 (カスタムトークン登録)
Trust Wallet に WAL を追加するには、まずカスタムトークンとして WAL を登録する必要があります。具体的には、WAL のコントラクトアドレス (Sui の場合は特定の形式) やトークンシンボル「WAL」、デシマル (小数点以下桁数) を正しく入力します。これにより、Trust Wallet 上で WAL の残高が可視化されます。
誤った情報 (アドレスやデシマルの間違い) で登録すると、残高が正しく表示されなかったり送受信が失敗するリスクがあるため注意が必要です。
WAL の受け取り (入金)
WAL を受け取るには、Trust Wallet で WAL を選択 → 「受け取る (Receive)」をタップ → 表示されたアドレスをコピー → 送金元 (取引所や別ウォレット) にそのアドレスを指定します。送金前にはアドレスが正しいか、対応チェーン (Sui など) が合っているかを慎重に確認することが重要です。
WAL の送信 (出金)
Trust Wallet から WAL を送信する際には、「送信 (Send)」を選択 → 宛先アドレスと送付数量を入力 → 手数料 (Sui ネットワーク手数料など) を確認 → 内容を最終確認 → 承認 → トランザクション実行という流れになります。送信後にはトランザクション ID (TXID) が発行され、それを元にブロックチェーンエクスプローラで確認可能です。
セキュリティと運用リスク
Trust Wallet を使って WAL を取り扱う際には、いくつかのリスク管理が不可欠です。
まず、シードフレーズはオフライン (紙や金属に記録) で保管し、第三者と共有しないことが基本です。
次に、送付先アドレスを登録または入力する際は、コピペ後の目視確認を行い、誤送金を防ぐべきです。
さらに、ウォレットアプリは必ず最新バージョンに更新し、セキュリティ修正や新機能を取り込むようにします。
最後に、不審な DApp や未知のサイトへのウォレット接続は避け、信頼性を確かめる習慣が重要です。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介
ここからは bitFlyer の基本情報と、WAL に関する取り扱い状況、およびその強み・制限を整理します。
bitFlyer の基本情報
bitFlyer（ビットフライヤー）は、日本国内で非常に知名度の高い暗号資産取引所です。金融庁登録の正規交換業者として信頼性があり、日本円による入出金が可能です。販売所形式と取引所形式の両方を提供しており、ユーザーは自分の取引スタイルに応じて選択できます。
また、bitFlyer は顧客資産をコールドウォレットに分別保管する体制を整えており、安全性に配慮した運営を行っています。
WAL に関する bitFlyer の取り扱い状況
現在 (調査時点) において、bitFlyer の通貨取扱リストや公式発表には WAL (Walrus) の記載は確認できません。bitFlyer が提供している暗号資産にも、WAL の扱いを示す情報がなく、WAL を取引所内で売買・保管する機能は提供されていない可能性が高いと考えられます。
この点は、WAL を保有しようと考える国内ユーザーにとって重要な制限です。bitFlyer 単体では WAL の取得や取引ができないため、他のウォレット (Trust Wallet など) や海外取引所との併用が必要となります。
bitFlyer の強み・制約 (WAL を軸に)
bitFlyer の強みは、日本国内で非常に高い信頼性を持つ取引所であること、法令順守体制が整っていること、そして日本円での入出金が容易なことです。これらは暗号資産投資を始める上で非常な安心材料となります。さらに、比較的低額 (1円から) で暗号資産を取引できる点も初心者にとって魅力的です。
しかし WAL のような新興トークンを主目的とする投資においては、bitFlyer の取り扱いがないことが致命的な制約となります。そのため、WAL を中心に運用する目的には bitFlyer 単独では不十分であり、他の取引所またはウォレットを併用する必要性があります。また、取引所に資産を預けるリスク (ハッキング、運営リスクなど) も忘れてはなりません。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：WAL を軸にした長所・短所
ここまでの内容を踏まえて、WAL を保有・運用する上で Trust Wallet と bitFlyer の強みおよび制約を整理します。
まず Trust Wallet は自己管理型ウォレットとして、ユーザーが秘密鍵を完全にコントロールできる点が最大の強みです。これにより、WAL を安全に保管し、送受信や長期的なホールドが可能です。モバイルアプリでの直感的な操作性と、多トークン対応の柔軟性も大きな利点となります。
一方、自己管理型であるがゆえに責任も大きくなります。トークンの誤登録、アドレス間違い、送金ミスなどを避けるには慎重な操作と確認が不可欠です。また、ウォレットのアップデートや手数料 (ガス代など) によるコストを定期的に見直す必要があります。
bitFlyer の強みは、日本国内での信頼性と資金管理のしやすさです。日本円で暗号資産を購入・売却できる点、法制度に準拠した運営体制、安全性などは非常なメリットです。
しかし、WAL のようなトークンを運用するには、取り扱いがないという明確な制限があるため、用途によっては bitFlyer は補助的な役割にとどまります。WAL を主軸とした資産構成には必ず別プラットフォームとの併用が必要です。
運用戦略および提言
WAL を投資・長期運用の対象とする場合、以下のような戦略が考えられます。
まずは Trust Wallet を中核とした自己管理型の運用 を基本とします。WAL をウォレットに保持し、将来的な Sui ネットワーク上での DApp 利用、ストレージ参加 (もし可能であれば) や送金を通じて、トークンのユーティリティを最大限に活かす方法です。
次に、取引所併用戦略 を検討します。WAL を扱っている海外取引所 (例：Bitget など) で購入し、購入分を Trust Wallet に送って自己管理に移すというアプローチが現実的です。これにより、ウォレットの安全性と取引所の流動性を両立できます。
さらに、長期保有＋価値向上を狙う戦略 も有効です。Walrus のデータストレージプラットフォームとしての成長、エコシステム参加 (開発者やアプリ利用者として) を注視し、トークンの実用価値が高まった時には適切な利益確定や追加保有を検討することが望ましいでしょう。
セキュリティ面では、シードフレーズのオフライン保管、ウォレットアプリの定期更新、不審な DApp への接続回避など、基本的な対策を徹底することが不可欠です。
結論
WAL（Walrus トークン）は、Sui ネットワーク上における分散型データストレージおよびアプリ開発インフラと強く結びついたトークンです。価格は過去に高い水準を経験しつつも、今は比較的低レンジで推移しており、将来的な成長には一定の潜在力があります。
Trust Wallet を使えば、WAL を完全に自己管理下に置き、安全に保管・送受信・活用できます。一方、bitFlyer は日本国内で非常に信頼性が高い取引所ですが、現時点で WAL の取り扱いは確認されておらず、WAL を主目的に取引・保有するには不十分です。
したがって、WAL を本格的に運用・長期保有するには、Trust Wallet を中核とした自己管理型アプローチに加え、WAL を扱う海外取引所との 併用戦略 が最も現実的かつ有効なアプローチであると言えるでしょう。
