USDT（テザー）とは
USDT（Tether USDt）は、米ドルと連動（ペッグ）するステーブルコインであり、法定通貨 USD の価値にできるだけ近づける設計がなされています。Tether Limited によって発行され、さまざまなブロックチェーン（Ethereum、TRON、BSC など）で ERC-20 やその他の規格として流通しています。
USDT は暗号資産市場で広く用いられており、トレードの決済手段、資産の一時待避、ステーブル価値の保存手段など多岐にわたる用途があります。
USDT の価格歴史：過去最低と最高
USDT はステーブルコインであるため、理想的には 1 USDT ≒ 1 USD に非常に近い価格を保つ設計です。実際の市場では、小さな変動が生じるものの、大きな価格変動（ボラティリティ）は一般的な暗号資産に比べてかなり限定的です。
過去の価格データを見ると、例えば LBank のデータでは、2024年から 2025年にかけて、USDT の価格は約 0.9998 米ドル から 1.0008 米ドル の範囲内で推移していた記録があります。
一方、CoinTelegraph の日本語価格指数によれば、円換算で 52 週間の変動幅は ￥148.34 ～ ￥156.24 のレンジとなっており、日本円ベースで見ても大きなスパイクは確認されていません。
つまり、USDT は理論どおり大きな値動きをしない通貨であり、ステーブル用途に非常に適しているといえます。
Trust Wallet による USDT の保管と送金
Trust Wallet の概要
Trust Wallet はスマートフォン向けの非カストディアルウォレットで、ユーザーが秘密鍵（復元フレーズ）を自ら管理します。多種多様なトークンやブロックチェーンをサポートしており、USDT のようなステーブルコインの保管にも適しています。
USDT を Trust Wallet に保管する方法
まず、Trust Wallet アプリをスマートフォンにインストールし、新規ウォレットを作成します。作成時には復元フレーズ（シードフレーズ）が表示されるため、紙など安全な場所に記録して保管してください。これはウォレットを復元するための唯一の手段となるため、紛失や漏洩を防ぐ必要があります。
次に、アプリ内で USDT を表示させます。USDT はさまざまなネットワーク（例：ERC-20、TRC-20、BEP-20 など）で発行されているため、自分が使いたいチェーンを正しく選択することが重要です。正しいチェーンを選ばないと、送金や受け取り時に資産が失われるリスクがあります。
「受け取る（Receive）」機能を使って、Trust Wallet 内の USDT アドレスを確認します。受け取りたいチェーン（例：ERC-20）を選び、そのアドレスを取引所や別ウォレットに伝えて送金します。相手から送金された USDT が正しくウォレットに反映されます。
USDT の送金（出金）
Trust Wallet から USDT を送金する場合、まず「送信（Send）」を選びます。送金先アドレス、送金量、使用するネットワーク（ERC-20 や TRON など）、および手数料（ネットワークガスまたはトランザクション手数料）を指定します。特にガス代はネットワークの混み具合により変動するため、適切な設定が求められます。
送金内容を確認後、承認して送信を実行します。トランザクションが承認されると、USDT が指定のアドレスに届きます。
セキュリティに関する注意
Trust Wallet は自己管理型ウォレットであるため、セキュリティはユーザー自身の管理能力に大きく依存します。復元フレーズを他人に見せず、安全な場所に保管することは必須です。また、スマートフォンにもパスロックや二段階認証などのセキュリティ対策を施すことで、不正アクセスリスクを低減できます。
さらに、不正な送金先アドレスを入力してしまうリスクやネットワークのガス代を誤って過剰に設定してしまうリスクにも注意が必要です。
Coincheck（コインチェック）取引所と USDT の関係
Coincheck の概要
Coincheck（コインチェック）は日本国内の主要な暗号資産取引所であり、スマートフォンアプリやウェブサイトを通じて暗号資産の売買・管理が可能です。取扱通貨数は 2025年時点で 35種類とされており、幅広い通貨をサポートしています。
また、Coincheck は貸暗号資産サービスを提供しており、ユーザーが保有資産を預けて利息を得る運用手段も用意されています。
Coincheck における USDT の取り扱い
しかしながら、Coincheck の現在の取扱銘柄一覧には USDT（Tether） の記載がありません。
さらに、Coincheck の「ステーブルコインで利益を上げる方法」に関する案内記事では、USDT が紹介されてはいるものの、実際に Coincheck 上での取り扱いや入出金がサポートされているかの明示はありません。
この点から、Coincheck では USDT の売買や入出金は現在サポートされていない、または限定的である可能性が高いと判断されます。
Trust Wallet と Coincheck の比較（USDT 運用の観点から）
Trust Wallet の強み
Trust Wallet は完全な自己管理型ウォレットであり、秘密鍵をユーザー自身が握る形となります。これにより、中央集権型取引所に資産を預けたときのリスク（ハッキング、運営不正など）を避けることができます。
USDT のようなステーブルコインを Trust Wallet に送って保管すれば、市場の大きな変動を避けつつ資産を安定的に保有できます。送金や受け取りは複数のブロックチェーンで可能であり、柔軟性があります。
また、Trust Wallet は多種のトークン・チェーンをサポートしており、DeFi プロトコルやスワップ機能を通じて USDT を他のトークンに交換したり DeFi 運用に回すことも可能です。
Trust Wallet の弱み・注意点
自己管理型ウォレットはセキュリティ責任が非常に高く、復元フレーズを適切に管理しないと資産を失う可能性があります。不正アプリやフィッシングサイトに注意し、常に最新のアプリと OS を維持する必要があります。
送金時のネットワーク選択を誤ると、資産が失われるリスクがあります。また、ガス代の設定を誤ると高額な手数料を支払うことになる可能性があります。
さらに、Trust Wallet 自体はサポートに限りがあり、トラブルが起きた際には自己解決が必要になるケースがあります。
Coincheck の強み（USDT を使った運用観点）
Coincheck は日本円との入出金が容易で、国内ユーザーにとって非常に使いやすいプラットフォームです。アプリの操作性が高く、初心者でも直感的に暗号資産取引を始められる利便性があります。
また、貸暗号資産サービスを提供しており、ステーブルコインを含む資産を預けて利息を得られる運用が可能な点は魅力的です。
Coincheck の弱み（USDT の観点で）
最大の弱みは、現時点で Coincheck に USDT の取り扱いが確認されていない 点です。これは、USDT を使いたいユーザーにとって大きな制約となります。
また、取引所に資産を預ける形になるため、ハッキングや運営リスクをゼロにすることはできません。仮に USDT が取り扱われるようになっても、出金や送金時には手数料がかかる可能性があり、コスト面で注意が必要です。
さらに、取引所は中央集権型であり、自分の資産を完全にコントロールする自由度は自己管理型ウォレットに比べると劣ります。
運用シナリオとおすすめ戦略
USDT をどのように運用・保有するかは、目的によって異なります。
長期保有あるいはリスク回避を重視する場合、Trust Wallet に USDT を長期間保管し、市場の大きな変動時にも安定した価値を確保する戦略が有効です。自己管理型ウォレットを使ってセキュリティを徹底すれば、資産を安全にコントロールできます。
あるいは、USDT を DeFi などで活用して利回りを狙いたい場合、Trust Wallet から DeFi プロトコルに資金をデポジットすることで利便性と収益性を両立させる方法もあります。
Coincheck で USDT を使いたいが直接サポートされていない場合は、まず USDT を取り扱う別の国内または海外取引所で取得し、その後 Trust Wallet に送金して自己管理するというハイブリッド運用が考えられます。
リスクと注意点
USDT を運用する際には、以下の点に注意が必要です。
まず、ステーブルコインとはいえ信用リスクがあります。発行体である Tether Limited の準備金報告や透明性に疑問を持つ声は過去にもあり、完全に無リスクではありません。
さらに、ウォレット管理のミス（復元フレーズの喪失や漏洩、誤送金など）は資産喪失につながるため、細心の注意が必要です。
送金時には、使用するネットワーク（ERC-20 や TRON など）を間違えると資産が行方不明になるリスクがあります。ガス代（手数料）も適切に設定しないと高額になる場合があるため、送金前に十分確認してください。
また、取引所に資産を預ける場合は、取引所の信用力やセキュリティ体制を検討し、必要に応じて資産を分散管理することが望ましいです。
結論
USDT（Tether USDt）は、米ドルと連動するステーブルコインとして、暗号資産市場で非常に重要な役割を担っています。Trust Wallet を利用すれば、USDT を自己管理型ウォレットで安全に保管・送金でき、価値の安定性を活かした運用が可能です。
一方、Coincheck では現時点で USDT の直接取扱が確認されておらず、USDT を使った売買や入出金は制限がある可能性があります。そのため、USDT 運用を検討する場合は、Trust Wallet と他の取引所を組み合わせたハイブリッド戦略が実用的です。
USDT を使った運用においては、価格安定性と同時に信用リスク、ウォレット管理リスク、取引所リスクなどを十分に理解し、安全かつ効果的な資産運用を心がけましょう。
