1. USDT（テザー）とは
USDT（Tether）は、米ドルにペグ（連動）したステーブルコイン（安定通貨）であり、実質的に「1 USDT ≒ 1 USD（米ドル）」を目指す通貨です。
Tether Limited は USDT を複数のブロックチェーンで発行しており、Ethereum（ERC-20）、Tron（TRC-20）、その他のチェーンに対応しています。
Trust Wallet でも、これらネットワーク上の USDT を安全に管理することが可能です。
2. USDT の価格履歴：過去最低値と最高値
USDT はステーブルコインであるため、基本的には 1 USD に近い価格で取引され続けていますが、過去にはわずかな乖離（ペグからのズレ）が記録された時期があります。
- CoinLore の historical データによれば、USDT の 過去最安値（ATL）は 約 $0.5885（2015年3月）。
- 同じく CoinLore で報告されている 過去最高値（ATH） は 約 $1.21（2015年2月）。
- より最近のデータでは、Bitget の過去チャートにおいては、価格が $1.00 ± ごくわずかな範囲を維持していると確認できます。
このように、USDT は設計通り非常に安定した価格帯で推移しており、極端な価格変動は他の仮想通貨に比べて限定的です。
3. Trust Wallet による USDT の保管・使用方法
以下に、Trust Wallet を使って USDT を扱う際の基本的な手順と注意点をまとめます。
3.1 Trust Wallet に USDT を追加（トークン登録）
- Trust Wallet アプリを起動する。
- メイン画面から「ウォレット」タブを選ぶ。
- トークン一覧に USDT が表示されていない場合は、「トークンを追加」あるいは “Add Tokens” をタップする。
- ネットワークを選べる場合、ERC-20（Ethereum） や TRC-20（Tron） など、自分が使っている USDT のチェーンを正しく選択する。 トークンを誤って登録すると、送金・受取時に問題が出ることがあります。
- ネットワークを選んだら、USDT のコントラクトアドレスを入力（必要に応じて）し、トークンシンボル（USDT）、小数点以下桁数（通常 6～18 など）を設定する。
- トークンの追加を確定すると、Trust Wallet の資産画面に USDT が表示されるようになります。
3.2 USDT の受け取り（入金）
- Trust Wallet で USDT を受け取るには、「受取（Receive）」をタップします。
- すると、登録したネットワーク（例：ERC-20 や TRC-20）ごとのウォレットアドレスまたは QR コードが表示されます。
- そのアドレスを送金元（取引所や別のウォレット）へ伝えて、USDT を送ってもらいます。
- トランザクションがブロックチェーンで承認されると、数分～時間以内にウォレット残高に反映されます。ただし、チェーンの混雑状況やガス／手数料によって変動する場合があります。
3.3 USDT の送信（出金）
- Trust Wallet で「送信（Send）」をタップします。
- 送信トークンとして USDT を選択。
- 送金先アドレスを入力（または QR コードをスキャン）。
- 送金額を指定します。
- ガス代（手数料）を確認します。ERC-20 の USDT を送る場合、Ethereum ネットワーク利用料として ETH が必要です。実際、Trust Wallet で USDT を送る際には、十分な ETH をウォレットに保有しておく必要があるとの指摘があります。
- 内容を最終確認し、「送信（Send）」を承認します。トランザクションが実行されます。
3.4 セキュリティおよびチェーンごとの注意点
- リカバリーフレーズ（シードフレーズ） は必ず安全な場所に保管してください。これを紛失または漏洩すると、資産へのアクセスが復旧不可能になる恐れがあります。
- ネットワークの選択ミス に注意してください。例えば、Tron（TRC-20）用のアドレスに Ethereum（ERC-20）版の USDT を送ると資産が失われるか戻らないことがあります。
- 手数料（ガス代）の準備：TRC-20 ネットワークで USDT を送る場合、Tron のネイティブ通貨である TRX が手数料に必要になることがあります。実際、Tron 版 USDT を送金する際に TRX が不足していたという報告があります。
- ウォレットのバージョン管理：Trust Wallet アプリは更新があるため、常に最新バージョンを使うことでセキュリティリスクを軽減できます。
4. USDT と bitFlyer（ビットフライヤー）の関係
4.1 bitFlyer における USDT の取り扱い
調査したところ、bitFlyer の公式情報（2025年時点）では USDT（Tether）の取り扱いが確認されていないようです。bitFlyer の FAQ や取扱通貨リストには、USDT に関する明示的な記載が見当たりません。
また、bitFlyer の暗号資産交換所に関する公開資料を確認しても、USDT が「取扱通貨」として一覧化されている情報はありません。
このため、Trust Wallet に保有している USDT を bitFlyer に送金して売買・換金することは、現時点では直接的には難しい可能性が高いです。
4.2 代替取引所の活用
USDT を取引または現金化したい場合は、bitFlyer 以外の取引所を利用する必要があります。具体的な方法は以下の通りです。
- USDT 対応の国内／海外取引所を利用
- 海外取引所（例：Binance、Bitget、Bybit など）では USDT 対応が一般的です。
- 国内でも USDT を扱う取引所があれば、そちらを活用する方法があります。 - USDT を他の通貨にスワップしてから送金
- Trust Wallet 内でスワップ機能を使い、USDT を ETH や BTC など別の通貨に変換し、その通貨を bitFlyer などで売却または送金する。
- ただしスワップ時にもガス代が発生するため、チェーンやネットワークを慎重に選ぶ必要があります。
5. USDT を Trust Wallet で保有するメリットおよびリスク
5.1 保有のメリット
- 価格の安定性
USDT は米ドルにペグされており、価格変動が非常に小さいため、暗号資産市場での「安全資産」「一時避難先」として有効です。 - 迅速な送金手段
USDT（特に TRC-20 版）を使えば、比較的低コストで迅速に送金できる可能性があります（ただし TRX が必要になる）。 - DeFi やステーブルコイン戦略への応用
USDT を DeFi プロトコルに預けたり、ステーブルコインを利用した戦略を展開することで、資産の流動性や利回りを活かした運用が可能です。 - 自己管理によるセキュリティ
Trust Wallet では秘密鍵を自分で管理できるため、取引所リスク（ハッキング、流動性リスクなど）を回避することができます。
5.2 リスク・注意点
- チェーン誤選択リスク
USDT には ERC-20 版や TRC-20 版などネットワークが複数あり、誤ったチェーンを選んで送金すると資産が失われる可能性があります。 - 手数料の負担
- ERC-20 版を送る際はガス代として ETH が必要。
- TRC-20 版では TRX が必要になる。これらの準備が不十分だと送金ができないというトラブルが Reddit などで報告されています。 - 流動性・交換リスク
bitFlyer など一部取引所で USDT の取り扱いがない場合、現金化や他通貨への交換が手間となる。 - プロトコルおよび管理リスク
Tether（USDT）自体の発行会社に関する透明性や準備資産の問題を懸念する声も一部存在します（ただし詳細は利用者が個別に評価する必要があります）。 - ウォレット管理リスク
リカバリーフレーズの漏洩やスマートフォンの紛失など、自己管理型ウォレット特有のリスクがあります。
6. まとめおよび今後の展望
- USDT（テザー） はドルペグ型のステーブルコインとして、非常に安定した価格を維持しながら、さまざまなブロックチェーン上で利用されています。
- 過去の価格データを見ると、最安値が $0.5885、最高値が $1.21 といった変動はあったものの、現在はほぼ 1 USD に近いレンジで推移しています。
- Trust Wallet を使えば、ERC-20 版や TRC-20 版の USDT を安全に管理・送受金が可能です。ただし、送金時にはネットワークの選択や手数料準備が非常に重要です。
- bitFlyer では現時点で USDT の取り扱いが明確に確認できておらず、USDT を換金・トレードする場合は他の取引所を活用する必要があります。
- 安定性の高い資産として有用な USDT ですが、チェーン選択ミスや手数料不足などの実務的なリスクも無視できません。これらを十分理解したうえで、Trust Wallet を通じた運用を行うことが重要です。
