はじめに
近年、異なるブロックチェーン間で資産を自由に交換できる クロスチェーン流動性プロトコル の重要性が高まっています。特に、ネイティブ資産を直接スワップできる設計を持つ THORChain は、その中核をなすプロジェクトとして注目を集めています。THORChain のネイティブトークンである RUNE を安全に管理し、活用するためには、適切なウォレットと理解が必要です。モバイルウォレットの代表格である Trust Wallet（トラスト・ウォレット） は、RUNE の保管やスワップにも対応しています。一方、日本国内の主要取引所 bitFlyer（ビットフライヤー） の取扱状況やその特徴を知っておくことも重要です。本稿では、Trust Wallet での RUNE 管理方法、RUNE の価格履歴、bitFlyer の紹介、そして両者の長所・短所を詳しく解説します。
RUNE（THORChain）とは
THORChain（ソー・チェーン）は、異なるブロックチェーン間でネイティブ資産の交換を可能にする分散型流動性プロトコルです。たとえば、ビットコイン、イーサリアム、BNB チェーンなど、異なるチェーンの資産をラップせずに直接スワップできます。これにより、中央管理の取引所を介さずに資産移動ができる点が大きな特徴です。
そのネイティブトークンが RUNE であり、THORChain のガバナンス、流動性提供（LP）、スワップ手数料の獲得など、さまざまな用途に使われています。
RUNE の価格履歴：過去最低値と最高値
RUNE はこれまで激しい価格変動を経験してきました。Phemex のデータによれば、現在（記事執筆時点）価格は約 0.71 USD 程度と報告されており、循環供給量なども併せて確認できます。
過去の最高値（All-Time High, ATH）は、MEXC の履歴データなどから 21.26 USD と非常に高い水準に達していたことが示されています。
一方、過去最低値（All-Time Low, ATL）については、同 MEXC のデータによれば 0.00794 USD 前後 の記録が確認されており、価格推移の激しさが読み取れます。
このような価格レンジをみると、RUNE は非常にリスクのある資産である一方、長期保有や戦略的な参画によって高リターンの可能性も秘めていることがうかがえます。
Trust Wallet による RUNE の管理・送金
Trust Wallet と RUNE の親和性
Trust Wallet は非カストディアル型ウォレットであり、ユーザー自身が秘密鍵（シードフレーズ）を管理します。 THORChain のネイティブ資産である RUNE を Trust Wallet に導入し、自己管理のもとで保管と送金が可能です。
また、Trust Wallet は THORChain をスワッププロバイダーとして統合しており、クロスチェーン・スワップをアプリ内で利用できる仕組みを提供しています。
RUNE のバージョン（ネイティブ／ERC20／BEP2）とアップグレード
過去には RUNE の異なるバージョン（ERC-20 版、BEP2 版）が存在しており、Trust Wallet でもこれを扱っていました。 THORSwap を使ってこれらのバージョンを ネイティブ RUNE（THOR.RUNE） にアップグレードする手順が整備されています。
具体的には、Trust Wallet で WalletConnect を使って THORSwap に接続し、ETH.RUNE や BNB.RUNE をネイティブ RUNE に変換できます。
ただし、この操作ではガス代（ETH や BNB）が必要であり、利用の際には余分にこれらをウォレットに保持しておく必要があります。
RUNE の受け取り（入金）
Trust Wallet で RUNE を受け取るには、まずウォレット画面で RUNE を選択し、「受け取る（Receive）」機能を使ってアドレスを取得します。このアドレスに対して他のウォレットや取引所から送金を行います。異なるネットワーク（ネイティブ、ERC20、BEP2）を扱う場合は、送付元で正しいバージョンのアドレスを指定することが重要です。誤ったネットワークを選ぶと資産を失うリスクがあります。
RUNE の送信（出金）
Trust Wallet で RUNE を送信する際は、RUNE を選択 → 「送信（Send）」 → 送付先アドレス、数量、必要に応じてガス代を指定 → 入力内容を最終確認 → 承認 → トランザクション実行、という流れになります。送金後はトランザクション識別子（TXID）が発行されるため、記録しておくと後の確認に役立ちます。
注意すべきリスクとセキュリティ
Trust Wallet で RUNE を扱う際にはいくつか注意点があります。まず、シードフレーズを安全に管理し、第三者に漏らさないようにしてください。ウォレット接続やスワップ時には、WalletConnect を利用するため、不正な DApp や詐欺サイトに接続しないように細心の注意が必要です。
また、過去には一部ユーザーが Trust Wallet と Thorswap との接続で問題を報告しており、WalletConnect の失敗を経験したケースがあります。 >「Trustwallet と Thorswap を接続する際に “Failed WalletConnect” というエラーが出る」など。
さらに、古い ERC20 版 RUNE をネイティブ版に変換する際、送金先ネットワークを誤ったりガスが不足したりするユーザーもいます。
そのほか、一部ユーザーからは “古い ETH ネットワーク上の RUNE が送れずスタックしている” という声もあり、安全性や操作性には注意が必要です。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介
bitFlyer の基本情報と信頼性
bitFlyer（ビットフライヤー）は、日本国内を代表する暗号資産取引所のひとつで、金融庁から暗号資産交換業者として登録を受けています。日本円の入出金が可能で、ユーザーへの信頼性が高いプラットフォームです。
セキュリティ体制も整備されており、顧客資産はコールドウォレットでの分別管理が行われるなど、資産保護を重視した運営がされています。また、販売所形式、取引所 Lightning 形式など多様なサービスが提供されており、初心者から上級者まで取引スタイルに応じた選択が可能です。
bitFlyer における RUNE の取扱状況
重要な点として、bitFlyer の公開されている仮想通貨取扱一覧には RUNE（THORChain） は記載されていません。つまり、少なくとも公表情報上では bitFlyer で RUNE の売買、預入、出金といったサービスは提供されていない可能性が非常に高いということになります。
このため、RUNE の運用や売買を主体に考えているユーザーにとって、bitFlyer は直接的な運用プラットフォームとしては適さない可能性があります。
bitFlyer の長所・制約（RUNE に関する視点を含む）
bitFlyer の強みは、国内ユーザーにとっての信頼性と利便性です。日本円でのスムーズな入出金、整備された利用者サポート、セキュリティ対策などが魅力です。取引所の信用度を重視するユーザー、また暗号資産を日本円ベースで管理したいユーザーには非常に有力な選択肢となります。
しかしながら、RUNE を保有・運用するという観点では、bitFlyer の取扱外は大きな制約です。取引所に資産を預けられない、スワップや LP に参加できないという点は、RUNE のユースケースを最大限に活かせない状況を意味します。さらに、取引所運用にはカウンターパーティリスク（取引所のハッキングや破綻など）があります。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：RUNE を軸にした優劣分析
Trust Wallet の強み
Trust Wallet は自己管理型ウォレットであり、秘密鍵をユーザー自身が所有できるため、取引所依存リスクを回避できます。RUNE をネイティブ資産として保有し、クロスチェーン・スワップをアプリ内で行えるため、THORChain の強みを存分に活かせる構成です。
また、過去の ERC20 や BEP2 版 RUNE からネイティブ RUNE へのアップグレードが可能であり、既に古いバージョンを所有しているユーザーも Trust Wallet を通じて移行手段を利用できます。さらに、Trust Wallet アプリはモバイルで非常に使いやすく、ウォレットの復元やアクセスも直感的に行えます。
一方、ユーザーには自己責任での管理が求められます。シードフレーズの管理を怠ると資産を失う恐れがあり、またスワップや送金時のアドレス間違いやネットワーク選択のミスも致命的です。さらに、一部接続に関して WalletConnect の不安定さやガスコストの問題が報告されています。
bitFlyer の強み
bitFlyer は日本国内で非常に高い信頼性を持つ取引所です。日本円での入出金が容易であり、日本の金融規制下で運営されている安心感があります。取引所形式、販売所形式など多様な取引モードを提供しており、利用者の目的や経験レベルに応じた使い分けが可能です。
しかし、RUNE を扱っていない点が最大の制約です。RUNE の保有・運用を考えるユーザーには、bitFlyer 単体では不十分であり、他のプラットフォームとの併用が必要になります。また、取引所に資産を預ける性質上、ハッキング・破綻といったリスクへの配慮も必要です。
運用戦略および提言
RUNE を運用するにあたっては、Trust Wallet を中心とした自己管理型アプローチが最も現実的かつ有効な戦略となるでしょう。特に THORChain のクロスチェーン機能を活かしたスワップや流動性提供（LP）を視野に入れるなら、自分の資産を完全にコントロールできるウォレットが不可欠です。
まず、Trust Wallet に RUNE を保管し、必要に応じて過去バージョン（ERC20／BEP2）からネイティブ RUNE へのアップグレードを検討します。アップグレードにはガス代が必要なため、ETH や BNB を余裕をもって保有しておくことが重要です。スワップや送金を行う際には、小額を使ってテスト送金を行うなど、安全性を確認しながら運用を始めるとよいでしょう。
また、RUNE に関するプロトコルやエコシステム（THORSwap、LP プロトコル、ガバナンスなど）の動向を定期的にチェックし、アクティブに参加する戦略も有効です。さらに、ウォレットのセキュリティを強化するために、シードフレーズのオフライン保存、アプリ更新、信頼できる接続先のみ使用するなどの習慣を徹底すべきです。
bitFlyer を併用して日本円を絡めた資産運用を行う場合は、RUNE 以外の通貨を bitFlyer で扱い、RUNE は Trust Wallet で管理するハイブリッド戦略を検討するのも一つの方法です。
結論
RUNE（THORChain）は、異なるチェーン間でネイティブ資産を交換できる革新的なプロトコルの中核トークンであり、そのユーティリティは非常に広範です。価格変動は大きいものの、長期保有や流動性提供を通じて価値を引き出す可能性があります。
Trust Wallet を利用すれば、RUNE を安全に保管し、必要に応じてネイティブ版にアップグレードしたりクロスチェーン・スワップを活用したりできます。一方、日本国内の主要取引所 bitFlyer は信頼性や利便性に優れるものの、RUNE の取扱がないという制約があります。
したがって、RUNE を本格的に運用するには、Trust Wallet を中核とした自己管理型アプローチを採用し、必要に応じて他のプラットフォームと組み合わせた戦略を構築するのが望ましいと言えます。
