はじめに
ブロックチェーン技術が成熟する中、スマートコントラクトプラットフォームとしての NEO（ネオ） は長年にわたり注目を集めてきました。NEO を安全に保有・管理し、必要に応じて送金するには適切なウォレットが不可欠です。その中でも、スマートフォン向けノンカストディアルウォレットである Trust Wallet（トラスト・ウォレット） は広く利用されています。一方、日本国内で代表的な暗号資産取引所である bitFlyer（ビットフライヤー） も重要な存在ですが、NEO に関する取り扱い状況には注意が必要です。本稿では、Trust Wallet での NEO の使用方法や利点・リスク、NEO の価格履歴、bitFlyer の特徴と NEO 取り扱いの状況、そして両者の比較を詳しく解説します。
NEO（ネオ）とは
NEO は、スマートコントラクトをサポートするブロックチェーン・プラットフォームとして、2014年に AntShares（アントシェアーズ）として創設され、2017年に現在の名称に改名されました。
NEO の特徴には、プラットフォーム上でスマートコントラクトを実行できる能力、そして NEO トークンと GAS トークン のデュアル・トークンモデルが含まれます。
また、NEO のコンセンサスアルゴリズムとして dBFT（Delegated Byzantine Fault Tolerance） を採用しており、高速な合意形成と比較的低いトランザクションコストを実現する設計がなされています。
このような設計により、NEO は分散型アプリケーション（dApps）や分散型金融（DeFi）などのプラットフォームとしての活用が期待されています。
NEO の価格履歴：過去最低値と最高値
NEO の価格は過去に大きな変動を経験しています。Bybit の情報によると、NEO の過去最高値（All‑Time High, ATH）は 198.38 USD（2018年1月付近）でした。
一方で、最近の価格はかなり低い水準にあり、Phemex によれば現在価格は約 4.60 USD 程度です。
最低値（All‑Time Low, ATL）については情報源にばらつきがありますが、CoinCarp のデータによれば、過去に 4.79 USD 付近を記録したという記録があります。
これらのデータから、NEO は非常に高いピークを経験したものの、その後は大幅に下落し、現在は落ち着いた価格帯を推移していると言えます。価格変動のリスクと潜在的な価値の両方を持つ資産であることが理解できます。
Trust Wallet による NEO の管理・送金
Trust Wallet の概要
Trust Wallet はモバイルアプリ（iOS／Android）およびブラウザ拡張（Chrome など）で利用可能なノンカストディアル型ウォレットです。ユーザー自身が秘密鍵（シードフレーズ）を管理する構造となっており、100以上のブロックチェーン・多数のトークンおよび DApp に対応しています。
この設計により、外部の取引所リスクを回避し、資産を自分で完全にコントロールすることが可能です。
Trust Wallet での NEO 対応状況
ただし、NEO を Trust Wallet に追加して管理することには注意が必要です。Reddit のユーザー報告によれば、Trust Wallet は NEO をネイティブにサポートしていない、または対応が不十分である可能性があります。たとえば以下の意見があります
このような報告から、Trust Wallet 上で安心して NEO を管理するには制限があるか、そもそも動作保証がされていない可能性があります。
NEO の受け取りと送信（Trust Wallet を通じて）
もし仮に Trust Wallet が NEO をネイティブにサポートしていた場合の一般的な流れを以下に説明します。
- 受け取り（入金）：
Trust Wallet で NEO に対応したアドレスを取得し（正しいバージョン、例えば N3 か Legacy かを確認）、そのアドレスを送付元（取引所や他ウォレット）に指定して送金します。送る時には、ネットワークを誤らないように注意する必要があります。 - 送信（出金）：
Trust Wallet で NEO を選択し、「送信（Send）」をタップ。送付先アドレスを入力し、出金量を指定します。ただし、NEO の場合はガス（手数料）の扱いが他のチェーンと異なり、GAS トークンとの兼ね合いがあるため注意が必要です。入力内容を確認し、問題なければトランザクションを承認します。 - リスク管理：
シードフレーズを安全に保管する、アドレス入力ミスを防ぐ目視確認、最新バージョンのウォレットアプリを利用するなどの対策が不可欠です。特に NEO の過去バージョン（Legacy）と新バージョン（N3）との互換性の問題には敏感になる必要があります。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介と NEO 取り扱い状況
bitFlyer の基本情報
bitFlyer（ビットフライヤー）は、日本を代表する暗号資産交換業者であり、金融庁に登録された正規取引所です。ユーザーが日本円を使って暗号資産を購入・売却できる点、信頼性のある運営体制、安全性を重視した資産管理などが特徴です。
資産保護の観点から、bitFlyer は顧客資産をコールドウォレットで分けて管理することが公表されており、セキュリティの強化に努めています。
bitFlyer における NEO の取り扱い状況
調査の結果、bitFlyer の公開資料には NEO の取り扱いに関する案内が見当たりません。bitFlyer の公式ニュースリリースや通貨取り扱いリストにも、NEO を新たに扱うとの発表は現在確認できず、NEO は bitFlyer では取り扱われていない可能性が非常に高いと考えられます。
この点は NEO を購入・保有したい国内ユーザーにとって重要な制約です。NEO を取得する際には、bitFlyer ではなく、NEO を扱っている他の国内外の取引所を利用する必要があるでしょう。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：NEO を軸にした強みと弱み
Trust Wallet の強み
Trust Wallet は自己管理型ウォレットであり、秘密鍵を自分で管理できる点が最大の強みです。これにより資産を取引所に預けずに保持でき、取引所リスク（破綻やハッキングなど）を軽減できます。
モバイルアプリでの操作性が高く、さまざまなチェーン・トークンに対応しているため、資産を一元管理しやすい点も魅力です。さらに、DApp 連携やスワップ機能を通じて Web3 活用も可能です。
ただし、NEO に関してはサポートが不明確な部分が多く、Reddit などの報告では「Trust Wallet では NEO が追加できない」「正しく表示されない」との指摘があります。また、Legacy アドレスと N3 アドレスの違いに起因する送金ミスのリスクも存在します。
bitFlyer の強み
bitFlyer は日本国内で非常に高い信頼性を持つ取引所であり、日本円での入金・出金がスムーズで、初心者にも使いやすいインターフェースを提供しています。セキュリティ体制も強固で、資産管理がしっかりしている点が安心材料です。
ただし、NEO の取り扱いがない（少なくとも公表上は対応していない）ため、NEO をメインに保有・運用したい人にとっては選択肢としては不十分です。資産を取引所に預けたままにする場合、取引所リスクも無視できません。
運用戦略と提言
NEO を運用・保有する際には、以下の戦略と注意点が考えられます。
まず、NEO を扱いたい場合は Trust Wallet 以外の専用ウォレット（例：Neon Wallet、NeoLine など）を検討するのが現実的です。Reddit の報告でも、Legacy アドレスや N3 アドレスを適切に扱える専用ウォレットを使うことが推奨されています。
特に、NEO の GAS を生成するにはネイティブ対応ウォレットが望ましいという意見もあります。
もし Trust Wallet をどうしても使いたい場合は、対応状況を最新で確認し、少額で送金を試すなど慎重に運用を始めることをおすすめします。
一方、bitFlyer など国内取引所を使って暗号資産を日本円で管理したい場合、NEO 以外の通貨を取引所で保有し、NEO は別のウォレットで管理する ハイブリッド戦略 が有効かもしれません。
さらに、NEO の将来性を考えて保有するなら、NEO エコシステム（dApps、スマートコントラクト、Neo N3 の進展など）を継続的にウォッチし、技術革新やマイグレーション（Legacy → N3 など）の動きに適応していくことが重要です。
セキュリティ面では、シードフレーズのオフライン保管、ウォレットの定期アップデート、不審なサービスへの接続を避けるなど、基本的な対策を徹底することが不可欠です。
結論
NEO（ネオ）はスマートコントラクト対応の代表的なパブリックチェーンであり、独自のトークンモデルやコンセンサス設計を持つ重要なプロジェクトです。その価格は過去に大きく上昇・下落を経験しており、資産運用にはリスクと機会の両方があります。
Trust Wallet は汎用性が高く強力なウォレットですが、現時点で NEO に対する対応には制限や注意点があるため、代替のウォレットも併用する戦略が賢明です。bitFlyer は国内で信頼性の高い取引所ですが、NEO の取り扱いがない可能性が高いため、NEO 専用の資産管理を任せる要件としては不十分です。
NEO をメインに運用する場合は、専用ウォレットを使った自己管理型＋技術・エコシステムへの参加を組み合わせた運用が最も適切と言えるでしょう。
