はじめに — GRT（The Graph）とは
The Graph（GRT）は、分散型ネットワーク上でデータをインデックス化し、ブロックチェーンデータへの高速かつ効率的なクエリ（検索）を可能にするプロトコルです。Ethereum をはじめとした多くのブロックチェーンからデータを取り出す「サブグラフ（Subgraph）」という仕組みを使い、dApps（分散型アプリケーション）が必要なデータを取得できるようになっています。
GRT トークンは、ネットワークの「キュレータ（Curator）」「インデクサ（Indexer）」「デリゲーター（Delegator）」などの役割において、信号を送ったりステーキングしたり、ガバナンス投票に参加するためのユーティリティを持っています。
また、bitFlyer によれば、GRT は開発者がチェーン上データを取得する際の手数料として使われ、保有者がステーキングで報酬を得たり、運営方針を決めるガバナンス投票に参加できるという仕組みが説明されています。
GRT の歴史的な価格（最安値・最高値）
GRT は価格変動が大きく、その歴史価格を理解することは保有・運用の判断材料として重要です。
- 史上最高値（All-Time High, ATH）
CoinMarketCap によると、GRT の最高値は 2021年2月12日 に 2.88 USD に達しています。
これは日本円に換算すると、bitFlyer のデータで示されているように、非常に高い水準でした。 - 史上最安値（All-Time Low, ATL）
CoinCodex や CoinCheckup などの情報を総合すると、GRT の最安値は 0.03739 USD と報告されており、これは 2025年10月10日 に記録されているデータもあります。
よって、GRT は現在（執筆時点）非常に過去のピークから大幅に下落した価格帯を経験しています。 - 現在の価格やレンジ
最新の価格は CoinCheckup や CoinMarketCap などで確認でき、変動幅が大きいため投資や保管をする際には過去価格の歴史も参考にすべきです。
Trust Wallet による GRT の保管と送金
Trust Wallet とは
Trust Wallet はスマートフォン向けの非カストディアルウォレットで、多数のブロックチェーンおよびトークンに対応しています。
ユーザー自身が秘密鍵（リカバリーフレーズ）を管理するため、ウォレット上の資産に対するコントロール性やプライバシー性が高いという強みがあります。
GRT（The Graph）を保管する
GRT は主に Ethereum（ERC-20）トークンとして発行されており、Trust Wallet でも ERC-20 トークンとして追加・管理が可能です。
Trust Wallet で GRT を受け取るには、ウォレット内で GRT を選び、「受け取る（Receive）」アドレスをコピーして、取引所や他のウォレットから送金します。
アドレスを選ぶ際には、ネットワーク（Ethereum など）が一致しているかを慎重に確認する必要があります。誤ったネットワークに送金すると資産を失うリスクがあります。
GRT の送金
Trust Wallet から GRT を送金する場合、アプリを起動して「送信（Send）」を選び、GRT トークン、送金先アドレス、数量を入力します。送金前にガス代（Ethereum ネットワーク手数料）を確認する必要があります。
ただし、一部ユーザーからはステーキングのために GRT を送ろうとしても、Trust Wallet 自体から直接ステーキングができないという報告があります。たとえば Reddit では、「Trust Wallet から GRT ステークのトランザクションが失敗する」「ガス代が消費されるがロックされて戻ってこない」などの経験が語られています。
このような場合、Trust Wallet を WalletConnect や外部ウォレット（Metamask など）経由で The Graph の公式ステーキングサイトに接続することで対応するユーザーもいます。
注意点・リスク
- ガス代（トランザクション手数料）が高騰するタイミングでは送金コストが大きくなる。
- アドレス間違いやネットワークの選択ミスによる資産喪失のリスクがある。
- ステーキングを目的とする場合、Trust Wallet 単体のみでは対応が難しいケースがある。
- ウォレットの復元フレーズ（シード）は安全な場所に物理的に保管する。
- 悪意あるリンクによるフィッシングに注意。実際、The Graph のフォーラムを装った詐欺の報告もあります。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所における GRT
bitFlyer の GRT 取り扱い
bitFlyer は 2024年2月26日より販売所形式で GRT（ザ・グラフ）の取り扱いを開始しました。
この発表は bitFlyer のプレスリリースでも明示されており、GRT が正式に取り扱われることで日本国内のユーザーにとっての参入障壁が下がったことを意味します。
bitFlyer の用語集でも、「GRT は分散型データ検索プロトコルにおいて使用されるトークン」であり、ステーキングやガバナンス投票にも使われる旨が説明されています。
bitFlyer の価格チャート
bitFlyer の GRT／JPY のチャートによれば、現在の参考価格はおよそ 8〜9円前後で推移しており、これは GRT の国際市場価格と日本円市場の動きを反映したものです。
また、bitFlyer のチャートには「24時間最安値」「24時間最高値」が表示されており、リアルタイムの価格変動を把握しやすい設計になっています。
ただし、bitFlyer によれば、「GRT は現在外部への送付ができない」との表記があります。
これは販売所形式の取り扱いにおける制限の可能性を示しており、出金や外部ウォレットへの移動を考えているユーザーには重要な制約となります。
Trust Wallet と bitFlyer の比較 — GRT に関する利点・欠点
Trust Wallet の利点
- 自己管理型ウォレットであり、秘密鍵を自分で保持できる。
- マルチチェーン対応で、多くの ERC-20 トークンを含む広範な暗号資産を管理可能。
- 入出金・送金が自由にでき、ステーキングを目的とする場合に他ウォレットや公式サービスと連携できる。
- プライバシー性が高く、取引所に資産を預けずに長期保有ができる。
Trust Wallet の欠点・リスク
- ガス代（Ethereum ネットワークの手数料）が高くなる場合、送金コストが無視できない。
- ステーキングを直接ウォレット内で行うことが難しい。実際、トランザクション失敗や資金ロックの報告がある。
- アドレスやネットワークの誤りによる資産喪失のリスク。
- 復元フレーズの管理ミスや紛失が、資産全体を失う重大なリスクになる。
bitFlyer の利点（GRT に関して）
- 日本国内の法令順守された取引所であり、信頼性が高い。
- 日本円での GRT 取引が可能。販売所形式であれば少額から購入できる可能性がある。
- 価格チャートが見やすく、24時間の価格変動が確認しやすい。
- GRT の取り扱い開始により、国内ユーザーがアクセスしやすくなった。
bitFlyer の欠点（GRT に関して）
- 現状、GRT の外部送付が制限されており、ウォレットへの出金ができない可能性がある。
- 販売所形式ではスプレッドがある可能性があるため、取引コストが割高になることも。
- 取引所に資産を預ける形となるため、カストディアルリスク（取引所の運営リスク、セキュリティリスクなど）を負う。
- GRT の出金・ステーキング目的で購入しても、取引所だけでは運用が難しいケースがある。
GRT を扱う際の運用戦略と注意点
GRT を使った保有・運用を考える際には、目的を明確にして戦略を立てることが重要です。
まず、GRT をただ保有して将来的な価格上昇を狙うのか、あるいはステーキングやガバナンス参加を目的とするのかを定めます。長期保有を目的とするなら、信頼できるウォレット（例：Trust Wallet やハードウェアウォレット）に資産を移す方が安全性が高いでしょう。
次に、送金時にはネットワーク（Ethereum など）のガス代を確認し、混雑状況を見て最適なタイミングを選ぶことが有効です。また、ステーキングを念頭に置くなら、Trust Wallet 単体で直接ステーキングできない可能性があるため、WalletConnect などを利用して公式ステーキングサイトに接続することを検討してください。
さらに、復元フレーズ（シード）は必ずオフラインかつ安全な場所にバックアップしておきます。紛失や漏洩があると資産を回復できない可能性があるためです。
取引所（bitFlyer など）で GRT を購入する場合、販売所形式か取引所形式かによってコスト構造が異なるので、実際の注文時にスプレッドや手数料をよく確認してください。また、出金ができない可能性がある取引所での保有にはリスクが伴うため、資産を取引所に預けっぱなしにせず、適切なタイミングでウォレットに移すことも検討すべきです。
結論
The Graph（GRT）は、分散型アプリケーションにとって非常に重要なプロトコルであり、データ検索・取得を効率化する役割を果たします。GRT トークンはステーキングやガバナンス用途に加えて、ネットワークの維持に深く関わる仕組みを持っています。
Trust Wallet を使えば自己管理型で GRT を保管・送金でき、プライバシー性や柔軟性が高く、ステーキング目的や長期保有に向いています。ただし、ガス代やステーキングの実装制限には注意が必要です。
一方、bitFlyer は日本国内での GRT 取引をサポートしており、法令順守や日本円での取引が可能という点で利便性がありますが、現時点では GRT の外部送金が制限されている可能性があり、純粋な保管・運用の手段としては限定的です。
GRT に投資・運用をする際には、自分の目的（保有か運用か）、リスク許容度、ウォレット管理能力をよく考え、適切な方法を選ぶことが重要です。
