暗号資産（仮想通貨）の世界には、ビットコイン（BTC）から派生して独自の理念や技術を持つ多様なプロジェクトがあります。その中でも Bitcoin SV（BSV） は、Satoshi Nakamoto の本来のビジョンを追求するという旗印のもとに誕生したチェーンであり、「スケーラブルな電子キャッシュ」「オンチェーンデータ処理の重視」などを掲げています。BSV を保有し、送受信や長期運用を行うには、適切なウォレットや戦略が不可欠です。
スマートフォン向けノンカストディアルウォレットである Trust Wallet（トラスト・ウォレット） は、多くの通貨に対応しつつ、ユーザー自身が秘密鍵（シードフレーズ）を管理できる点で信頼性があります。一方で、日本国内の主要取引所 bitFlyer（ビットフライヤー） も重要な資産運用の拠点ですが、BSV の取り扱いには限界があります。本稿では、Trust Wallet を使った BSV 管理の方法、BSV の価格推移、bitFlyer の立ち位置と BSV との関係、および両者を活かした運用戦略を詳しく解説します。
BSV（Bitcoin SV）とは
BSV（Bitcoin Satoshi Vision）は、ビットコイン・キャッシュ（BCH）から分岐 (ハードフォーク) して誕生した暗号資産です。Satoshi Nakamoto の「オリジナルのビジョン」に立ち返るという理念を掲げ、開発者や支持者の間では「スケーラビリティ」「オンチェーン大容量トランザクション」「大規模なデータ処理」などを実現しようという方向性があります。
BSV は Proof‑of‑Work（PoW）を継承し、最大発行量は 2,100万 BSV と定められています。
コミュニティの中には、Paypal やゲーム、データストレージなどオンチェーン利用を重視するユーザーもおり、単なる「ビットコインの分岐コイン」以上の実用性を望む声があります。
BSV の価格履歴：過去最低／最高値
BSV の価格は歴史的に非常に大きな変動を経てきました。
- 過去最高値 (ATH)：Bybit や Phemex のデータによれば、BSV は 489.75 USD という史上最高値を記録しています。
- 過去最低値 (ATL)：CoinMarketCap などの統計では、BSV の最安値は非常に低い水準を記録した時期もあり、同サイトでは過去最低価格として約 ¥2,817.64 が報告されています。
- 現在価格：Phemex によれば、取材時点で BSV の価格は 約 23.65 USD に近い水準。
- 価格履歴の推移：LBank の過去データを参照すると、2024〜2025年のレンジにおいて日次での価格変動がかなり大きかったことが確認できます。
これらの数字から、BSV は非常に高い価格を経験した一方で、その後大きく調整され、ボラティリティが高い資産であることがわかります。これは投資家にとってリスクと機会の両面を意味します。
Trust Wallet による BSV の管理・送金
次に、Trust Wallet を使って BSV を管理・送金する際の方法やメリット、注意点を解説します。
Trust Wallet の基本操作とメリット
Trust Wallet は、スマートフォン (iOS／Android) 向けのノンカストディアルウォレットです。ユーザー自身が秘密鍵 (シードフレーズ) を持つため、取引所に資産を預ける形ではなく、自分でコントロールできます。この点は資産の安全性にとって非常に重要です。
また、Trust Wallet は多くの暗号資産（ERC‑20 や主要チェーンコインなど）をサポートしており、UI も直感的で使いやすいため、初心者にも適したウォレットです。
BSV の追加 (トークンまたはコインとして) と表示
しかし、重要な注意点があります。Reddit などのコミュニティ報告によれば、Trust Wallet は BSV をネイティブにサポートしていない、あるいは誤って BCH (Bitcoin Cash) と混同して表示される可能性があるとの指摘があります。などの投稿が見られます。
このため、Trust Wallet で BSV を正しく管理するには十分な注意が必要です。シードフレーズを使って BSV 特有のウォレットを復元した際に、実際に BSV ブロックチェーンを参照できるかどうかを事前に確認する必要があります。
BSV の受け取り (入金)
BSV を受け取るには、Trust Wallet 内で該当するアカウント（もし BSV 対応されていれば）を選択し、「受け取る (Receive)」アドレスを生成して送金元に伝えます。しかし、前述の通り BSV に対応しない、または誤ったチェーンを選ぶと資産が失われるリスクがあるため、送金前には必ずアドレスとネットワーク (BSV 用チェーン) の一致を確認してください。
BSV の送信 (出金)
送信する場合、「送信 (Send)」を選び、宛先アドレス、送付量を入力。さらにトランザクション手数料 (マイナー手数料) を確認して実行します。BSV のブロックチェーン特有の確認方法（トランザクションの承認数など）も理解しておくとよいでしょう。
セキュリティ上の留意点
Trust Wallet を用いて BSV を保管・送金する際には、以下の点を特に注意すべきです：
- シードフレーズをオフライン (紙・金属など) にバックアップし、第三者に知られないようにする。
- 送金先アドレスをコピペ後に目視確認し、誤送金を防止。
- Trust Wallet アプリを定期的に更新し、セキュリティの強化を図る。
- BSV 対応の確認：自分のウォレットが BSV ネイティブに対応しているかを慎重に見極める。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介
続いて、bitFlyer の概要と BSV との関係、強み・制約について整理します。
bitFlyer の基本情報
bitFlyer（ビットフライヤー）は、日本国内を代表する暗号資産取引所の一つであり、金融庁登録の正規交換業者です。日本円入出金が可能で、販売所形式および取引所形式を提供しており、安全性と利便性を兼ね備えています。資産管理面でもコールドウォレットを使った分別管理が実施されており、運営体制が信頼されていることが大きな魅力です。
bitFlyer における BSV 取り扱い状況
bitFlyer の過去公式資料によれば、現時点で BSV の現物取引サービスを提供していないとの記録があります。bitFlyer が公開した “Response Guidelines for Planned Hard Forks” にもという記載が見られます。
また、2019年・2020年の文書では、bitFlyer が BSV 保有者に対して日本円での換算付与を実施したという報告があるものの、これは配当的な処理であり、継続的な取扱＝取引サービス提供とは異なるものです。
この点から、bitFlyer を使って BSV を売買・保管する目的には限界があり、単独のプラットフォームとしては不十分な可能性があります。
bitFlyer の強み・制約 （BSV に関する視点を含む）
bitFlyer の強みは、日本国内における高い信頼性、法令遵守、資金を日本円で管理できる利便性、安全性の高い運営体制などです。これらは暗号資産初心者にとっても安心感を提供します。
しかし、BSV のような特定通貨を主目的に取引・保有するユーザーにとっては、取り扱いがないという制約は非常に大きいです。取引所だけで完結できないため、ウォレットや他の取引所との併用が必須となるケースが多いでしょう。また、取引所に資産を預けたままにする場合は、ハッキングリスクや運営リスクへの備えも必要です。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：BSV を軸にした強み・弱み
BSV を保有・運用する際、Trust Wallet と bitFlyer を比較すると、それぞれ異なる役割を果たせることが見えてきます。
Trust Wallet の優位性は、自己管理型ウォレットとして秘密鍵を完全に自分で管理できる点にあります。特に BSV のような通貨では、取引所に預けるリスクを回避できる一方、送受信・長期保有を自身でコントロールできます。さらに、スマホアプリでの操作性が高く、資産管理や送金が直感的に行えます。
ただし、Trust Wallet に BSV を適切に追加・管理できない可能性や、関連設定の誤りなどによるリスクは無視できません。ユーザーには自己責任での運用と、慎重な確認が求められます。
bitFlyer の強みは、日本国内での信頼性、資金の円建て管理、法令順守とセキュリティ体制などです。暗号資産を始めたい／日本円を絡めて運用したいユーザーにとって非常な利点があります。
しかし、BSV に関しては取扱がないため、bitFlyer を主な手段に使った BSV 運用は難しいです。BSV を保有・取引するには、別のウォレットまたは海外取引所との併用が必要になるでしょう。
運用戦略および提言
BSV を本格的に運用・保有するには、以下のような戦略を検討するとよいでしょう。
まず、Trust Wallet を中心とした自己管理型アプローチを基本とします。これにより、BSV を自分の秘密鍵で管理し、送受信・長期保有を自己の裁量で行えます。特に大きな資産を保有する場合は、この方法が最も安全性も高いと言えます。
次に、取引所併用戦略を考えます。BSV を取り扱っている海外取引所 (例: Bybit、BingX など) を活用し、そこで購入した BSV を Trust Wallet に送金して自己管理する流れが現実的です。これにより、日本円での資金動線と BSV の管理を両立できます。
また、将来的なユースケースやエコシステムを注視する戦略も有効です。BSV の開発チームやコミュニティの活動、オンチェーンデータプラットフォームの進展、マイクロペイメントやデータストレージ用途の採用などをウォッチし、中長期での価値向上を狙います。
セキュリティ面では、シードフレーズのオフライン保存、ウォレットアプリの定期アップデート、誤送リスク回避のためのアドレス確認など、基本的な対策を常に徹底するべきです。
結論
BSV（Bitcoin SV）は、ビットコインの系譜にありながら独自性の強いブロックチェーンプロジェクトであり、大容量チェーンやオンチェーンデータ処理、電子キャッシュ用途への意欲を持つ通貨です。価格はかつて非常な高値を記録しましたが、その後大幅に下落し、現在は比較的落ち着いたレンジで推移しています。
Trust Wallet を使用すれば、BSV を自己管理型で安全に保管・送金でき、取引所には依存しない資産コントロールが可能です。bitFlyer は日本国内での取引所として非常に信頼できる存在ですが、現時点で BSV の取り扱いがないため、BSV 運用には直接的には適していません。
したがって、BSV を本格的に保有・運用するには、Trust Wallet を中核に据えつつ、海外取引所との併用を通じて資産取得と管理を行う ハイブリッド戦略 が最も現実的かつ効果的なアプローチです。
