Trust Wallet は、初心者から経験豊富なトレーダーまで幅広い層に支持されているモバイル暗号資産ウォレットです。2017 年にオープンソースかつ非カストディアル型モバイルウォレットとして登場し、2018 年 7 月に Binance によって買収されたことで、その信頼性が一層高まり、業界最大級の取引所との連携が確立しました。
それ以来、Trust Wallet は大きく成長し、2025 年半ばには 2 億件以上のダウンロード数と 1 億 4,000 万人を超える月間アクティブユーザーを記録しました。Ethereum、Solana、Binance Smart Chain を含む 100 種類以上のブロックチェーンに対応し、分散型取引所（DEX）へのアクセス、ステーキング、DApp 接続などの機能を内蔵しています。
多くのユーザーが Trust Wallet を自己管理型の安全なウォレットとして利用していますが、「人気がある＝安全」というわけではありません。
本記事では、Trust Wallet のセキュリティモデル、実際の事例、プライバシーポリシー、安全な使用方法を詳しく解説し、他の主要ウォレットとの比較も行います。
主なポイント
- Trust Wallet はローカルでの鍵保管、ハードウェアレベルの暗号化、定期的な第三者監査を伴うオープンソースコードによって、一般的に安全に利用できます。
- 非カストディアル型ウォレットであるため、秘密鍵とリカバリーフレーズはユーザー自身が管理します。したがって、資産の責任は完全にユーザーにあります。
- 主要なセキュリティ機能には、AES-256 暗号化、Secure Enclave／Android Keystore の統合、生体認証ログイン、PIN 保護、内蔵トランザクションリスクスキャナーなどがあります。
- それでもリスクは存在します。リカバリーフレーズの紛失、不正な DApp への接続、フィッシング詐欺に遭うと、資産を取り戻すことはできません。
- MetaMask、Coinbase Wallet、Ledger などと比較して、Trust Wallet はモバイルの利便性と堅牢なセキュリティのバランスに優れていますが、カスタマーサポートが限定的なため、ユーザー自身の安全管理が重要です。
Trust Wallet のセキュリティモデルの理解
Trust Wallet は非カストディアルモデルを採用しており、ユーザーが秘密鍵を直接保有します。これは完全な管理権を意味する一方で、責任も全てユーザーにあります。
非カストディアルモデルの特徴：
- Trust Wallet は秘密鍵や個人情報をサーバーに保存しません。
- アプリがユーザーのデバイス上で秘密鍵を生成し、暗号化します。
- ウォレットとその資産にアクセスできるのはユーザー本人のみです。
- ウォレットへのアクセスを失った場合、復元サービスは存在しません。秘密鍵やリカバリーフレーズを失うと、資産は永久に失われます。これは自己管理型ウォレットの本質的なトレードオフです。
ローカル暗号化と鍵の保管
Trust Wallet は秘密鍵とウォレットデータをユーザーのデバイス内にローカル保存します。AES-256 暗号化という金融機関や政府機関でも採用されている暗号標準を使用し、保存前にすべての重要データを暗号化します。
アプリは TrustCrypto や libsodium などの安全な暗号ライブラリを用いて鍵を生成し、BIP39・BIP44 などの決定論的標準に準拠しています。これにより、鍵生成時の乱数品質と鍵の完全性が保証されます。
アプリは秘密鍵やシードフレーズを外部サーバーに送信しません。セットアップ時に、ユーザーはウォレット全体をバックアップできる 12 語のリカバリーフレーズを受け取ります。このフレーズはデバイス内で暗号化され、ユーザーが手動でバックアップを取らない限り外部に出ることはありません。
Trust Wallet はデバイスのハードウェアセキュリティ機能を利用して鍵を保護します。iOS では Apple の Secure Enclave、Android では Keystore System を使用し、暗号データをシステムの他の部分から隔離します。これにより、マルウェアや root 化された端末であっても、ユーザーの承認なしに暗号鍵を抽出することはできません。
ユーザーがリカバリーフレーズを iCloud や Google Drive にバックアップする場合、アップロード前にアプリがフレーズを暗号化します。この操作にはユーザーが設定したパスワードが必要であり、Trust Wallet はそのパスワードもバックアップデータも保存しません。
これらの仕組みにより多層防御が実現されています。仮に端末が第三者にアクセスされたとしても、生体認証または PIN コードと復号鍵がなければウォレットを使用することはできません。
Trust Walletのコアセキュリティ機能
Trust Walletには、ウォレットの設定、アクセス、トランザクションの承認中にユーザーを保護する複数のセキュリティツールが含まれています。
完全な秘密鍵の所有権
ユーザーは秘密鍵を制御します。外部サービスやプラットフォームがそれらを保存することはありません。これにより、キーの侵害やアカウントの凍結に関連する第三者のリスクが排除されます。
ハードウェアレベルの暗号化
このアプリはAES-256暗号化を適用し、秘密鍵を安全なハードウェアモジュールに保存します。これには、iOS の Secure Enclave と、サポートされている電話の Android キーストアが含まれます。これらのハードウェアコンポーネントは、高度な脅威シナリオでも、主要な材料を分離し、抽出を防ぎます。
生体認証およびPINロック機能
ユーザーは、指紋認証または顔認証をサポートするデバイスで指紋認証または顔認証を有効にすることができます。このアプリでは、ユーザーは保護を強化するために PIN を設定することもできます。これらのオプションは、ウォレットへの不正アクセスを阻止します。
暗号化されたリカバリバックアップ
Trust Walletを使用すると、必要に応じて暗号化されたクラウドバックアップをエクスポートできます。アプリは、ユーザーが設定したパスワードのみを使用してこのバックアップを保護します。Trust Walletは、そのパスワードや回復データにアクセスすることはできません。
パブリックオープンソースコードベース
Trust Walletは、すべてのウォレットコードをGitHubで公開します。これにより、開発者、研究者、コミュニティは、ウォレットが暗号化、ストレージ、署名プロセスをどのように処理するかを検査、テスト、検証できます。パブリックコードは、信頼性と透明性を向上させます。
第三者によるセキュリティ監査
ウォレットは年間を通じて独立したセキュリティ監査を受けています。Halborn、Certik、Cure53、Kudelski、Quantstamp などの企業は、ウォレットの脆弱性、侵入リスク、コード品質をテストしています。監査プロセスにより、アプリは最新のモバイルセキュリティ標準に準拠しています。
トランザクションリスクスキャナー
Trust Walletには、リスクの高い契約にフラグを立てるトランザクションスキャナーが組み込まれています。このツールは、ユーザーが疑わしい DApps に接続したり、潜在的に有害な権限でスマート コントラクトに署名したりしたときにアラートを発します。
すべてのトランザクションの手動署名
ユーザーは、すべての送信トランザクションを確認して承認する必要があります。Trust Walletは、秘密鍵を使用して、デバイス上でローカルに各トランザクションに署名します。アプリは、ユーザー入力とデバイスレベルの認証なしでトランザクションをブロードキャストしません。
ウォレットのセキュリティに対するこの階層化されたアプローチは、不正アクセス、フィッシング攻撃、コントラクトレベルの悪用を防ぐのに役立ちます。ユーザーは引き続き完全に制御でき、リスクプロファイルに基づいて追加の予防措置を適用できます。
暗号通貨コミュニティにおける Trust Wallet の評判
Trust Wallet は、暗号通貨分野で強い存在感を築いてきました。その技術的なデザインと使いやすさが評価され続けています。
プラットフォームは頻繁にセキュリティ監査を受けます。毎年、30を超える独立した監査により、アプリのパフォーマンス、侵入耐性、インフラストラクチャが評価されます。監査パートナーには、Halborn、Quantstamp、Certik、Kudelski、Cure53などがあります。
Trust Wallet は、オンチェーン アクティビティで最もダウンロードされている非保管ウォレットになりました。その採用の増加は、そのモデルに対するユーザーの信頼を反映しています。
ただし、他のプラットフォームと同様に、時折批判に直面します。
コインテレグラフによると、2022年後半から2023年初めにかけて、ブラウザ拡張機能のバグにより17万ドルの損失が発生し、払い戻されたという。チームは問題に迅速にパッチを適用し、公に警告を発した。
TrustPilotでは、Trust Walletの評価は「悪い」と評価されており、人々はさまざまな側面について懸念を表明しています。支払いの問題は重要な論点です。
Trust Walletを使用する際の一般的なリスク
Trust Wallet モデルでは、ユーザーが責任を負います。このアプローチは制御を提供しますが、リスクも増大します。
最も一般的なリスクは次のとおりです。
- フィッシングの試みには、多くの場合、偽の Web サイト、偽のアプリ、または偽のサポート メッセージが含まれます
- マルウェア、スパイウェア、物理的な盗難などのデバイスレベルの脅威により、秘密鍵が漏洩する可能性があります
- リカバリフレーズを紛失したり、間違ったアドレスに暗号通貨を送信したりしたユーザーは、資産を回復できません
- 未検証または悪意のある DApps に接続すると、ウォレットを消耗する契約の悪用につながる可能性があります
これらのリスクは、すべての非保管ウォレットに存在します。Trust Wallet は露出を減らすのに役立ちますが、間違いや詐欺を完全に防ぐことはできません。
Trust Wallet がトランザクションを安全に処理する方法
Trust Walletは、すべての取引にセキュリティを組み込みます。これにより、ユーザーはすべての転送を手動で承認できます。
主なセキュリティ要素は次のとおりです。
- すべての送信トランザクションには、ユーザーによる直接の確認が必要です
- 取引承認にはPINまたは生体認証アクセスが必要です
- トランザクションは、完了する前にブロックチェーン上で複数の確認に合格する必要があります
- すべてのウォレットデータと取引情報はデバイス上で暗号化されたままです
これらの保護により、権限のないアクターが承認なしにトランザクションを強行することが困難になります。
データプライバシーと保護ポリシー
Trust Walletはプライバシーを第一に考えたアプローチを適用しています。ユーザーから収集されるデータの量を制限します。
- アプリは秘密鍵やウォレットの資格情報を保存または収集しません
- ほとんどのウォレット操作は、身元を明らかにすることなく完全にオンチェーンで行われます
- Trust Walletは個人データを取引履歴にリンクしません
ユーザーは、サービス提供中に保存された限定データにアクセスしたり、修正したり、削除を要求したりできます。ブロックチェーンデータ自体は不変で公開されたままですが、Trust WalletはそのデータをユーザーのIDに結び付けません。
このアプリは、コンプライアンスのニーズを満たし、ユーザーの匿名性へのアプローチを反映するために、プライバシー ポリシーを定期的に更新します。
オンチェーン プライバシーの実際の意味を確認し、理解するには、記事をお読みください。
ユーザーエクスペリエンスとフィードバック
多くのユーザーがウォレットを賞賛する一方で、問題や懸念を指摘するユーザーもいます。
肯定的なフィードバック
- ユーザーは、さまざまなトークンをサポートするクリーンでシンプルなインターフェイスを楽しむことができます
- このアプリは、高速で低コストのトランザクションの処理に優れたパフォーマンスを発揮します
- 多くのユーザーは、日常の使用やステーキング活動に信頼できると感じています
- 初心者も経験豊富なトレーダーも、デザインとマルチチェーンのサポートを高く評価しています
負のフィードバック
- 一部のユーザーは、支払い表示の遅さや UI エラーなどのバグを報告しています
- サポートの対応が遅れたり、不明確になったりすることへの不満を指摘する人もいます
- 偽のリンクやステーキングトラップを通じて新規ユーザーを標的とする詐欺は依然として一般的です
- リカバリフレーズの紛失は依然として大きな問題であり、一度紛失すると解決策はありません
Trust Walletを安全に保つためのベストプラクティス
ユーザーは自分のウォレットを保護するための措置を講じる必要があります。Trust Walletはツールを提供しますが、ユーザーは優れたプラクティスを適用する必要があります。
リスクを軽減するには、次の手順に従ってください。
- 12 ワードのリカバリー フレーズを書き留め、オフラインで安全な場所に保存します
- スクリーンショットを撮ったり、フレーズをクラウドストレージや電子メールに保存したりしないでください
- 生体認証ログインを有効にし、強力なPINコードを使用する
- モバイルデバイスを最新の状態に保ち、ウイルス対策ソフトウェアで保護します
- マルウェアにさらされる可能性のあるデバイスのルート化やジェイルブレイクは避けてください
- 内蔵のセキュリティスキャナーを使用して、安全でないトランザクションを検出します
- ウォレットは、検証済みで評判の良いDAppsにのみ接続してください
- DAppアクセスを承認する前に、すべての権限を確認してください
これらの基本的なアクションにより、ほとんどの既知の攻撃ベクトルや詐欺を防ぐことができます。
Trust Walletのカスタマーサポートと問題解決
Trust Walletは、分散型設計のため、限定的なカスタマーサポートを提供しています。それでも、ユーザーはアプリやオンライン リソースを通じて助けを求めることができます。
利用可能なサポートチャネルは次のとおりです。
- アプリ内ヘルプセンター
- オンラインドキュメント
- コミュニティフォーラム
サポートのやり取りは、多くの場合、自動化されたシステムから始まります。より複雑なケースでは、ユーザーは人間のエージェントにエスカレーションできます。
多くのユーザーは、さまざまな結果を報告しています。TrustPilot のレビューによると、問題を迅速に解決するものもあれば、より長く待つか、限られたガイダンスを受けるものもあります。
Trust Walletの安全性を他のウォレットと比較
ユーザーはしばしば、Trust Wallet を他の人気ウォレットと比較します。各ウォレットにはそれぞれの長所と短所があります。
| ウォレット | 主なセキュリティ機能 | 使いやすさ | 推奨ユーザー層 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| Trust Wallet | ローカル鍵保管、セキュリティ監査、生体認証ログイン、トランザクションスキャナー | 非常に使いやすい | モバイルユーザー、DApp 利用者、自己管理志向のユーザー | すべてのリスクをユーザー自身が負担、サポートが限定的 |
| MetaMask | DApp へのアクセス、オープンソース監査、ローカル鍵保管 | 使いやすい | DeFi ユーザー、ブラウザ中心の利用者 | モバイル専用版がない、秘密鍵紛失リスクは同様 |
| Coinbase Wallet（ベースアプリ） | Coinbase との統合、DApp ブラウザ、アカウント復元機能 | 導入が簡単 | Coinbase ユーザー、アプリ中心の投資家 | 一部機能が Coinbase アカウントに依存 |
| Ledger | コールドストレージ、オフライン鍵管理、ファームウェア保護 | 中程度 | セキュリティ重視の長期保有者 | コストが高く、リアルタイム利用が制限される |
- Trust Wallet は、モバイル アプリを通じて DApps やオンチェーン ツールにアクセスしたいユーザーに適しています。
- MetaMaskは、DeFiプラットフォームを使用するブラウザファーストのユーザーに最適です。
- Coinbase Walletは、Coinbaseエコシステム内のユーザーのよりスムーズなオンボーディングをサポートします。
- Ledgerは、特に大量の資金を長期的に保管する人にとって、最も保護的な保護を提供します。
最終評決 – Trust Wallet は安全に使用できますか?
Trust Walletは、デジタル資産を管理するための高レベルのセキュリティと制御を提供します。強力なローカル暗号化を適用し、ユーザーに完全なキー所有権を与え、データ収集を制限します。
同時に、ユーザーはリカバリ フレーズを管理し、アプリの権限を確認し、デバイスを保護する必要があります。Trust Walletは、紛失したキーを回復したり、ユーザーエラーを元に戻したりする方法を提供していません。
このウォレットは、世界中の何百万人もの信頼を獲得し続けています。そのセキュリティ設計は、常に情報を入手し、ベスト プラクティスに従い、暗号通貨を完全に制御することを好む人に最適です。
