はじめに
DeFi（分散型金融）プロトコルの台頭により、借り入れ・貸し出し市場は大きく成長してきました。その中でも Compound（コンパウンド） は、ガバナンストークン COMP を通じてプロトコルの意思決定に参加できる重要なプロジェクトです。COMP を安全に保有・管理し、必要に応じて送金や運用を行うには、使い勝手と信頼性の高いウォレットが不可欠です。スマートフォン用ノンカストディアルウォレットである Trust Wallet（トラスト・ウォレット） は、多くのトークンに対応しており、COMP の管理にも適しています。一方、日本国内の主要暗号資産取引所である bitFlyer（ビットフライヤー） の COMP 取り扱い状況やその特徴を把握しておくことも重要です。本稿では、Trust Wallet を軸に COMP の運用方法、COMP の価格履歴、bitFlyer の紹介と COMP への対応、さらに両者の比較を詳しく解説します。
COMP（Compound）とは
Compound は、分散型の貸借市場を提供する DeFi プロトコルで、ユーザーは暗号資産を預けて利息を得たり、資産を担保に借り入れを行ったりできます。Compound のネイティブガバナンストークンである COMP は、プロトコルのガバナンス（提案と投票）に利用されるほか、インセンティブとしても機能します。Compound の設計は透明性が高く、スマートコントラクトを通じて資産プールが管理され、利率は供給と需要によってアルゴリズム的に調整されます。
ガバナンス参加を通じて、COMP 保有者はプロトコルの重要な意思決定に関与できます。これには、新機能の追加、手数料構造の変更、セキュリティパラメータの見直しなどが含まれます。Compound は DeFi の黎明期から存在感を持ち、多くの流動性を集めた信頼性の高いプロトコルの一つです。
COMP の価格履歴：過去最低値および最高値
COMP の価格はこれまで大きな変動を経験してきました。 CoinGecko のデータによれば、COMP の過去最高値（All-Time High, ATH）は 910.54 USD（2021年5月12日）です。
一方、過去最低値（All-Time Low, ATL）は 22.89 USD（2025年10月10日付近）と報告されています。
また、DigitalCoinPrice によれば、COMP の循環供給量は約 9.64 百万トークン、全体供給量は 1,000万トークン です。
CoinLore のデータでは、異なる情報ソースもありますが、過去最低値として 21.02 USD 付近、また最高値として 848 USD 台という記録もあります。
これらの数字から、COMP が一時期非常に高い価格に達していたものの、その後大幅に下落しており、価格変動リスクが高いことが明らかです。同時に、ガバナンストークンとしてのユーティリティを持つため、長期保有や参加型運用を通じて価値を得る可能性も秘めています。
Trust Wallet による COMP の保管・送金
Trust Wallet の導入と基本設定
Trust Wallet はスマートフォン（iOS / Android）向けのノンカストディアルウォレットで、ユーザー自身が秘密鍵（シードフレーズ）を管理する設計です。新しくウォレットを作成する際には、12語またはそれ以上のシードフレーズが提示され、それを安全な場所にオフライン保存する必要があります。シードフレーズを失うとウォレットを復元できず、資産を取り戻せなくなるリスクがあります。
COMP のトークン追加（カスタムトークン）
Trust Wallet を初期設定した後、COMP（Compound ガバナンストークン）がデフォルトで表示されない場合は、カスタムトークンとして手動で追加できます。カスタムトークン追加時には、COMP の Ethereum コントラクトアドレス、トークンシンボル「COMP」、および小数点以下の桁数（デシマル）を正しく入力します。正しく設定されれば、ウォレット内に COMP が表示され、残高が確認できるようになります。
COMP の受け取り（入金）
COMP を受け取るためには、Trust Wallet アプリを開き、COMP トークンを選択して「受け取る（Receive）」をタップします。表示されたウォレットアドレスをコピーし、取引所や他のウォレットからそのアドレスに COMP を送付します。送金元でネットワーク（通常は Ethereum）を間違えないよう注意が必要です。誤ったネットワークへの送金は資産を失う危険があります。
COMP の送信（出金）
送金する際は、Trust Wallet で COMP を選択し、「送信（Send）」をタップします。送付先アドレス、送信数量、ガス代（トランザクション手数料）を指定し、入力内容を確認します。特にアドレスはコピペの後、目視でも確認する習慣をつけると安全性が高まります。トランザクションを承認すると、TXID（トランザクション識別子）が生成され、これを記録しておくことで後から取引状況を確認できます。
セキュリティおよびリスク管理
Trust Wallet を利用する際には、以下の点を徹底することが重要です。まず、シードフレーズを第三者に知られないよう厳重に管理する必要があります。ウォレット接続や操作を行う際は、不審な DApp やウェブサイトに接続しないよう注意してください。ガス代が高い時間帯を避ける、送金前に少額でテストを行うなどの工夫も推奨されます。また、Trust Wallet アプリは常に最新バージョンにアップデートし、セキュリティ向上に努めるべきです。
bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の紹介
bitFlyer の基本概要と信頼性
bitFlyer（ビットフライヤー）は、日本国内で広く利用されている大手暗号資産取引所です。金融庁に登録された暗号資産交換業者であり、法規制を遵守した運営を行っている点から、ユーザーの信頼が厚いプラットフォームです。日本円での入出金に対応しており、初心者から上級者まで幅広いユーザー層に利用されています。
セキュリティ面でも、顧客資産の一部をコールドウォレットで分別管理するなどの対策が講じられており、資産保護に力を入れています。さらに、販売所形式（ユーザー対取引所）および取引所形式（Lightning）を提供しており、取引スタイルに応じた使い分けが可能です。
bitFlyer における COMP の取り扱い状況
重要な点として、公開されている bitFlyer の仮想通貨取り扱いリストには、COMP（Compound） は含まれていない可能性が高いです。公式発表資料や取扱通貨一覧に COMP の記載は確認されておらず、少なくとも公表された時点では bitFlyer が COMP の売買・入出金に対応していないと考えられます。
その結果、COMP を保有・運用する目的のユーザーにとって、bitFlyer は直接的な取引プラットフォームとはなりにくいでしょう。
bitFlyer の強みと制約（COMP の観点を含む）
bitFlyer のメリットは、日本国内ユーザーに対する信頼性と利便性です。日本円での資金移動がスムーズで、法規制下で運営されているため安心して資産を預けられる点が強みです。また、取引手段が多様で、取引所経験のない初心者でも利用しやすい構成です。
一方で COMP に関しては、取扱がない点が最大の制約です。COMP の売買・ステーキング・ガバナンス参加といった運用を行いたい場合、bitFlyer 単独では実質的な手段が限定されます。加えて、取引所に資産を預けるという性質から、取引所リスク（運営破綻やセキュリティ事故など）を意識する必要があります。
Trust Wallet と bitFlyer の比較：COMP を軸とした長所・短所
Trust Wallet の優位性
Trust Wallet は自己管理型ウォレットであり、ユーザー自身が秘密鍵を管理できるため、取引所リスクを回避できます。COMP を保有しつつ、必要に応じて送金やガバナンス参加を行う際に非常に柔軟かつ安全な選択肢です。
また、Trust Wallet はその設計上、多数の ERC-20 トークンに対応しており、COMP もその対象です。モバイルアプリによる直感的な操作が可能で、送受信や残高確認も容易です。さらに、シードフレーズによる復元が可能なため、端末を紛失してもリスクを抑えて資産を管理できます。
ただし、自己責任での管理が前提となるため、シードフレーズの紛失や漏洩、操作ミス（アドレス入力ミス、ネットワーク誤選択など）は重大なリスクです。ガス代の高騰や DApp との接続不具合にも注意が必要です。
bitFlyer の優位性
bitFlyer は日本国内の信頼性が高い取引所であり、日本円を使った入出金や取引がスムーズに行えます。セキュリティ体制や運営の透明性も強く、ユーザーに安心感を提供します。販売所形式・取引所形式ともに利用可能で、初心者から上級者まで幅広く対応できる点も魅力です。
しかし、COMP を扱っていないという点が大きな制約です。COMP をメインに利用したい場合、bitFlyer 単体では十分な運用ができません。また、取引所に資産を預けるという前提があるため、ハッキングリスクや経営リスクへの配慮が避けられません。
運用戦略および提言
COMP を本格的に運用・保有する場合、まず Trust Wallet を中心とした自己管理型アプローチ が現実的かつ有効です。これにより、ガバナンス参加や送金、長期ホールドが容易になります。
具体的には、Trust Wallet に COMP を保管し、必要に応じてカスタムトークン追加を行います。入金時には小額でテストを行い、正しいアドレスとネットワークを確認する習慣をつけるべきです。ガス代が高騰している時間帯を避けるなど、コスト管理にも工夫が必要です。
また、Compound プロトコルに関与し、ガバナンス投票に参加したり、利息を得る貸出／借入機能を活用した運用を検討するとよいでしょう。これにより、単なる投機ではない中長期的な価値の獲得が可能です。
さらに、ウォレットのセキュリティを確保するため、シードフレーズのオフライン保管、定期的なアプリ更新、不審な DApp 接続の回避を徹底することが重要です。
もし日本円ベースの資産運用も視野に入れる場合には、bitFlyer を併用し、COMP 以外のトークンを取引所で扱いつつ、COMP は Trust Wallet で管理するというハイブリッド戦略も有効です。
結論
COMP（Compound のガバナンストークン）は、DeFi プロトコルの中でも非常に重要な役割を果たす資産です。価格変動は激しいものの、ガバナンス参加や流動性提供などを通じて中長期の運用価値を見出せます。
Trust Wallet を利用すれば、COMP を安全に自己管理し、送金や運用を柔軟に行えます。一方、bitFlyer は国内ユーザーにとって信頼性の高い取引所ですが、現時点では COMP の取り扱いが確認されておらず、COMP を運用するには適したプラットフォームとは言えない状況です。
したがって、COMP の運用には Trust Wallet を中核とした自己管理型が基本戦略となり、必要に応じて他のプラットフォームを併用した運用を検討するのが望ましいと言えます。
