DAI（ダイ）とは — 基本概要
DAI（ティッカー：DAI）は、MakerDAO によって発行されるステーブルコインで、イーサリアム（Ethereum）上のスマートコントラクトによって運用されています。MakerDAO の設計により、ETH や USDC などの暗号資産を担保に過剰担保型ローンを発行し、その貸出の一部を担保にして DAI が発行されます。目標として「1 DAI = 1 米ドル（USD）」のペグを維持し、市場での安定性を実現しようとする仕組みが採られています。
この設計により、DAI は価値の保存手段（デジタルドル）、DeFi アプリでの交換通貨、レンディング／借り入れ用途など、多様なユースケースを持つ資産となっています。
DAI の価格履歴 — 過去最安値と最高値
DAI は理論上は「1 DAI ≈ 1 USD」を目指すステーブルコインですが、実際には若干の価格変動があり得ます。以下に歴史的な価格レンジとその背景を説明します。
- 最高価格（All‑Time High, ATH）
CoinMarketCap のデータによると、DAI の過去最高値（ATH）は 約 $3.67 と記録されており、これは極めて稀な事象です。 - 最安価格（All‑Time Low, ATL）
同じく CoinMarketCap の履歴によれば、DAI の最安値は 約 $0.897 と報告されています。 - 日常的な価格の安定性
通常、DAI はおおむね 1 USD 付近を維持しており、価格の振れ幅は非常に限定的です。CoinMarketCap の現時点価格も $0.9997 と、目標に非常に近い水準を示しています。 - 変動要因
1. 担保資産の価値変動：DAI は担保資産（例：ETH、USDC など）の価値変動に影響を受けるため、急激な担保評価の変動時にはペグが一時外れることがあります。 > 以前、USDC の価値変動が DAI の価値に影響を与えたとの報告もあります。
2. 安定性メカニズム：MakerDAO は「Peg Stability Module（PSM）」などを導入して価格を安定させようとする一方で、担保不足や大きな市場変動時には調整が難しくなることもあります。
3. 需給バランス：DeFi での借り入れ／供給、流動性プールの動きなどが DAI の発行量や市場流通量に影響を与える可能性があります。
4. 市場の信用・規制リスク：ステーブルコインであっても、規制や信用リスクが潜在的な価格変動リスクを内包しています。
Trust Wallet による DAI の管理
Trust Wallet を使って DAI を管理する方法と、その際の注意点を以下にまとめます。
Trust Wallet とは
Trust Wallet（トラスト・ウォレット）は、スマートフォン対応の非カストディアルウォレットです。ユーザーが秘密鍵およびリカバリーフレーズを自己管理でき、多くの ERC‑20 トークンを扱える設計となっています。DAI も Ethereum ベースのトークンであるため、Trust Wallet で安全に保管可能です。
DAI を Trust Wallet に追加・保管する手順
- ウォレットの準備
スマートフォンに Trust Wallet アプリをインストールし、新しいウォレットを作成するか、既存ウォレットを復元します。 - トークンを追加
資産一覧画面で「＋（トークン追加）」をタップし、「DAI」または「Dai」と検索します。表示された DAI を有効化します。 - 受け取りアドレスを取得
DAI を選択 → 「受け取る（Receive）」をタップ → 表示されたアドレスをコピーします。このアドレスを取引所や他のウォレットから送金先として指定できます。 - バックアップ
ウォレット作成時に表示されるリカバリーフレーズ（ニーモニック）や秘密鍵を、紙やオフラインメディアなど安全な方法で保管します。
運用時の注意点
- 送金手数料（ガス代）
DAI は ERC‑20 仕様のトークンであるため、送金時には Ethereum ネットワークのガス代がかかります。送金前にはガス代を見積もり、ウォレット内に十分な ETH を残しておくことが重要です。 - セキュリティ
送金アドレスは正確に確認し、コピー＆ペースト後にミスがないかを丁寧にチェックしてください。不審なウォレットやフィッシングサイトを避ける必要があります。 - 分散型利用
DAI は DeFi アプリやレンディングプラットフォームにおいて価値の保存手段として活用されることが多いため、資産分散やリスク管理の観点から他ウォレットやプラットフォームとの併用を検討するとよいでしょう。
Trust Wallet から取引所への送金（DAI の出金）
Trust Wallet に保管している DAI を他の取引所やウォレットに送りたい場合、その手順は以下の通りです。
- 送金先アドレスを確認
出金先となる取引所やウォレットで DAI の受け取りアドレス（ERC‑20 対応）を取得します。 - 送金準備
Trust Wallet アプリで DAI を選択 → 「送金 (Send)」 → 送金先アドレスをペースト → 送金量を入力します。 - 手数料確認
ガス代を見積もり、送金後にウォレット内に残すべき ETH の量を把握します。 - 最終確認・送金実行
アドレス、数量、手数料を慎重に確認し、問題がなければトランザクションを実行します。 - 送金確認
トランザクション ID（TXID）を取得し、Etherscan などのブロックチェーン・エクスプローラーで送金ステータスを確認します。
bitFlyer における DAI の取扱状況
bitFlyer（ビットフライヤー）は、2024年2月19日より、販売所サービスにて DAI（ダイ） の取り扱いを開始しています。
この取り扱い開始により、日本国内ユーザーも bitFlyer 上で DAI を購入・保管できるようになりました。
ただし、bitFlyer のチャートによれば、入金（預入）・送付（出金）については「現在外部送付できない」という注意書きがあり、出金は制限されている可能性があります。
このため、Trust Wallet などに送金して外部で利用するには、bitFlyer 側の出金対応がどうなっているか最新の状況を確認することが重要です。
リスクおよび注意点
DAI を Trust Wallet や bitFlyer で利用する際には、以下のリスクと注意点を理解しておく必要があります。
- ペグの変動リスク
DAI は「1 USD ≈ 1 DAI」を目指す設計ですが、市場の需給バランスや担保価値の変動によってペグが外れる可能性があります。歴史的には $0.89 程度まで下落した事例もあります。 - 担保資産リスク
DAI 発行の背後には担保資産があり、その価格下落や担保供給の減少がリスク要因になります。担保構成が複数の資産（ETH, USDC など）である点も理解しておく必要があります。 - ガス代コスト
ERC‑20 トークンであるため、送金にはイーサリアムのネットワーク手数料が必要です。ガス代の高騰時には運用コストが増加する可能性があります。 - 出金制限リスク
bitFlyer では出金が制限されている可能性があり、Trust Wallet などへ資金を移動させる際にはその対応状況を確認する必要があります。 - スマートコントラクトリスク
MakerDAO のスマートコントラクトに欠陥や攻撃があれば、担保資産の管理や DAI の発行に問題が出る可能性があります。 - 規制リスク
ステーブルコインは規制当局からの注目が強く、将来的に規制強化が行われる可能性があります。
将来性とまとめ
- 安定性と信頼性：DAI は MakerDAO による設計に支えられ、多くの DeFi プロトコルで信頼されるステーブルコインです。
- ユースケースの広さ：価値保存、レンディング、借り入れ、決済など、多用途に対応可能なトークンです。
- 価格の信頼性：通常の市場環境下ではかなり安定しており、USD ペグを目指す設計が機能しています。しかし稀にペグからの乖離もあり得るため、完全な無リスクではありません。
- ウォレット戦略：Trust Wallet による保管は利便性が高く安全ですが、送金や出金時の手数料などを考慮する必要があります。
- 取引所戦略：bitFlyer での取り扱いに対応しているため、日本国内ユーザーにとって利便性がありますが、出金制限などの詳細を把握しておくことが重要です。
- リスク管理：担保、スマートコントラクト、規制リスクなどを理解しつつ、資産の一部または全体を DAI で保有するかどうかを検討するべきです。
