はじめに：FDUSD とは
FDUSD（First Digital USD）は、First Digital Limited（First Digital Labs）が発行する米ドル担保型のステーブルコインです。発行元である First Digital Trust により、米ドル準備資産（現金や短期米国国債など）で裏付けられており、1 FDUSD ≒ 1 USD の比率を維持する設計となっています。
FDUSD はマルチチェーンで展開されており、Ethereum（ERC-20）、BNB Smart Chain（BEP-20）、さらに Sui や Arbitrum などのネットワークにも対応しています。
発行体は定期的に準備資産の監査報告を公開しており（例：毎月の準備証明）、信頼性のあるステーブルコインとして評価されています。
FDUSD の価格履歴：最安値・最高値と変動リスク
FDUSD は理論上 1 USD にペッグされたステーブルコインですが、過去には価格がペグを外れたこともあります。
- 史上最高値：CoinMarketCap によれば FDUSD の過去最高値は約 1.06 USD と記録されています。
- 史上最安値：同じく CoinMarketCap によると、2025年4月2日頃に 0.8811 USD まで下落した記録があります。
- 脱ペグの事例：2025年4月には、Tron のジャスティン・サン氏が First Digital Trust の支払い能力を疑問視する発言をしたことで市場に不安が広がり、FDUSD の価格が一時的に 0.87 USD 付近まで急落したとの報告があります。
- 信用・健全性：S&P Global の評価レポートでは、FDUSD のステーブルコインとしての安定性は「制限付き（constrained）」と評価されており、リスク面の指摘もあります。
こうした背景から、FDUSD を利用・保管する際には、ステーブルコインとはいえ価格リスクや信用リスクを無視できない点に注意する必要があります。
Trust Wallet とは
Trust Wallet はスマートフォン（iOS／Android）向けの非カストディアル型ウォレットです。ユーザーが秘密鍵を自己管理でき、多数のトークン（ERC-20 など）を保管・送受信することができます。
FDUSD（ERC-20 トークンなど）も Trust Wallet 内で扱うことが可能です。主な特徴は以下の通りです：
- リカバリーフレーズ（シードフレーズ）によるウォレットのバックアップ
- 秘密鍵をユーザーが保有することで、取引所に預けた状態とは異なる自己管理の自由性
- トークンの追加、送金、受け取り、残高確認といった基本的操作の簡便さ
Trust Wallet での FDUSD 管理：受け取り・送金の手順
以下に、Trust Wallet で FDUSD を管理する手順と注意点をまとめます。
- ウォレットの作成およびバックアップ
Trust Wallet アプリをスマートフォンにインストールし、新しいウォレットを作成します。作成時に表示されるリカバリーフレーズを紙やオフライン媒体に保存し、安全に保管してください。 - トークン（FDUSD）を追加
ウォレットの「資産（Assets）」画面で FDUSD を検索し、有効化（表示）します。もし一覧にない場合は、カスタムトークンとして FDUSD のコントラクトアドレスを入力して追加する必要があります。 - 受け取り（入金）
「受け取る（Receive）」を選択 → FDUSD を指定 → ウォレットアドレスが表示されるので、これをコピーまたは QR コードで取得 → 取引所や他ウォレットから送金時の宛先として使用。 - 送金（出金）
「送信（Send）」を選択 → FDUSD を選ぶ → 送金先アドレスを入力または貼り付け → 送金量を指定 → ガス代（手数料）を確認 → 内容を最終確認して送金を実行。 - トランザクション確認
送金後は Trust Wallet 内の履歴で確認できます。必要に応じて Etherscan などのブロックチェーンエクスプローラーでトランザクション ID（TXID）を確認することで、送金状況を追跡できます。 - セキュリティ管理
リカバリーフレーズを厳重に管理し、スマートフォンには PIN や生体認証を設定して、不正アクセスを防止してください。
FDUSD の用途および特徴（ユースケース分析）
FDUSD はステーブルコインとして、複数の実用的な用途があります。
- 取引および決済
トレーダーや投資家は価格変動を抑えたい際に FDUSD を使用できます。また、支払い・決済手段としても利用可能です。 - DeFi への参入
FDUSD はマルチチェーンで展開されており、Ethereum や Arbitrum などの DeFi プロトコルで利用されることがあります。低コストのトランザクションやステーブルアセットとしての参加が想定されます。 - 信用・準備資産の透明性
発行体が準備資産の証明を定期公開しており、信託型の準備構造を採っている点は利用者にとって信用面の強みとなります。
リスクと注意点
FDUSD の利用・保管には以下のようなリスクがあります。
- デペグ（価格乖離）リスク
発行元や市場の混乱によって価格が 1 USD を大きく下回る可能性があるため、完全にリスクフリーとは言えません。実際、2025年にはペグが崩れた事例があります。 - 信用リスク
First Digital Trust や発行体の財務状況、準備資産の管理が不適切であれば、流動性リスクや償還リスクが生じます。S&P Global はステーブルコイン安定性評価で「制限付き（constrained）」と評価しています。 - スマートコントラクトリスク
FDUSD のスマートコントラクトは監査を受けていますが、公開ソースではないという指摘もあります。 - 流動性リスク
取引所間やチェーン間の流動性が限定的な場合、即時の換金や利用が難しい可能性があります。 - 送金リスク
ウォレットへの送金時にアドレスを誤ったり、ガス代を過小見積もったりすると送金失敗または資産の損失につながる可能性があります。
bitFlyer における FDUSD の取扱い状況
現在（2025年時点）、bitFlyer に関して信頼できる情報源を確認したところ、FDUSD を取り扱っているという公式な記載は確認できません。bitFlyer の公開情報（暗号資産取扱一覽など）には FDUSD に関する記載がないため、少なくとも現時点では以下のような状況が想定されます：
- bitFlyer で 現物取引（スポット取引） において FDUSD の取り扱いがない可能性が高い
- 出金（ウォレットへの送金） に関しても、FDUSD に対応しているアドレスを提供していない可能性がある
- bitFlyer の公開資料（例：プレスリリースや取扱通貨ページ）に FDUSD 関連のお知らせは見当たらない
そのため、Trust Wallet から bitFlyer に対して FDUSD を送金（入金）を試みる運用は、現時点では実務的ではないと考えられます。
もし将来的に bitFlyer が FDUSD をサポートするようになった場合、以下のような点に注意する必要があります：
- 入金アドレスの確認：bitFlyer が FDUSD 専用の入金アドレスを発行しているかを確認
- ネットワークの確認：FDUSD は複数チェーンで展開しており、正しいチェーン（ERC-20 など）を選択しなければ送金ミスになる可能性があります
- テスト送金：最初に少額を送金して、正常に入金が反映されるかを確認する
- セキュリティ管理：リカバリーフレーズ、Wallet の秘密鍵などを厳重に保管し、不正アクセスへの対策を徹底する
- トラブル時の対応：送金失敗や入金不反映などのトラブルが発生した場合に備え、トランザクション ID（TXID）を記録し、bitFlyer サポートに問い合わせる準備をしておく
まとめ
- FDUSD（First Digital USD）は First Digital Limited が発行する米ドル担保型ステーブルコインで、Ethereum や BNB Chain など複数チェーンに対応しています。
- 過去には価格がペグを外れた事例があり、最安値では約 0.8811 USD まで下落した記録があります。
- Trust Wallet を使うことで、FDUSD の自己管理が可能であり、安全なウォレット運用が行えます。
- しかし、信用リスクやスマートコントラクトリスク、流動性リスクなども考慮すべきです。
- 現時点で bitFlyer において FDUSD の取り扱いは確認されておらず、Trust Wallet からの送金・入金を前提とした運用は実用的ではない可能性があります。
