近年、ブロックチェーン技術の進展に伴い、暗号通貨への関心が世界的に高まっています。特にイーサリアム（Ethereum、ETH）は、ビットコインに次ぐ規模を持つ主要な暗号資産として、スマートコントラクトや分散型アプリケーション（DApps）の基盤として広く利用されています。本稿では、ETHの安全な保管および送信手段として人気の高い「Trust Wallet」の使い方について詳しく解説するとともに、日本国内で信頼性の高い暗号通貨取引所である「bitFlyer（ビットフライヤー）」との連携や、それぞれの特徴、利点・欠点についても比較検討します。
1. Trust Walletとは
Trust Walletは、2017年に開発され、後にバイナンス（Binance）によって買収されたモバイル向け非保管型ウォレットです。iOSおよびAndroidに対応しており、ユーザー自身がプライベートキーを完全に管理できるため、セキュリティ面での信頼性が高いと評価されています。非保管型という特性上、運営会社がユーザーの資産を管理することはないため、ハッキングやサービス停止のリスクから資産を守ることができます。
Trust Walletの主な特徴として、ETHおよびERC-20トークンのサポートに加え、BNBチェーンやその他の主要ブロックチェーンにも対応している点が挙げられます。また、内蔵されているDAppブラウザにより、UniswapやAaveといった分散型取引所や金融サービスに直接アクセスできるため、ユーザーはウォレットを離れることなく多様なDeFiサービスを利用可能です。
2. Trust WalletにおけるETHの保管方法
Trust WalletにETHを保管するには、まずアプリをスマートフォンにダウンロードし、アカウントを作成する必要があります。初期設定時には、12個のワードからなるリカバリーフレーズ（秘密鍵のバックアップ）が生成されます。このフレーズは、万が一スマホを紛失・破損した場合でも資産を復元するために必要不可欠であり、第三者に知られないよう紙などに記録して安全な場所に保管することが強く推奨されます。
アカウント作成後、ウォレット内のETH専用アドレスを確認できます。このアドレスは英数字で構成された文字列またはQRコードとして表示され、他者からの送金を受け取る際に使用します。ETHをTrust Walletに送信する際は、信頼できる取引所や他のウォレットからこのアドレス宛てに送金操作を行います。ネットワーク選択を誤らないよう、「Ethereumネットワーク」を使用していることを確認してください。
3. Trust WalletからのETH送信手順
Trust WalletからETHを他のアドレスへ送信するには、以下の手順に従います。まずアプリを開き、保有するETHの残高が表示されている画面で「送信」ボタンをタップします。次に、送金先のウォレットアドレスを正確に入力するか、QRコードをスキャンします。送信前にアドレスの末尾数桁を必ず照合し、誤送金を防ぐことが重要です。
送信量を入力した後、ガス代（トランザクションフィー）の設定が求められます。Trust Walletでは、ネットワークの混雑状況に応じて「低」「標準」「高速」の3段階から選択可能で、早い承認を希望する場合は若干高めの手数料を支払うことで優先的に処理されます。最後にトランザクション内容を確認し、パスコードまたは生体認証で承認することで送信が完了します。
なお、送信後はブロックチェーン上に記録されるまで数秒から数分程度かかる場合があり、状況によってはさらに時間がかかることもあります。すべての取引は公開台帳に記録されるため、取り消しは不可能である点に注意が必要です。
4. ETHの価格動向：歴史的最高値と最低値
イーサリアムは2015年7月30日にメインネットがローンチされ、当初の価格は約0.3ドル前後でした。これがETHの事実上の「歴史的最低価格」といえるでしょう。その後、2017年の仮想通貨バブル期に急騰し、2018年1月には約1,400ドルの高値をつけました。しかし、市場の調整により価格は下落し、2019年には300ドル台まで下げることもありました。
2020年以降、DeFiやNFTの台頭によりETHの需要が再び高まり、2021年11月には約4,800ドルという歴史的最高値を記録しました。この価格上昇の背景には、ETHの実用性の高さに加え、エッジコンピューティングやWeb3への期待が大きく影響しています。2022年のマクロ経済の悪化やLUNAショックなどの影響で価格は一時的に下落しましたが、2023年以降は再度回復傾向にあります。
ETHの価格変動は、技術的なアップデート（例：The Mergeによるプルーフオブステークへの移行）や規制環境、市場心理など多くの要因に左右されるため、長期的な視点での資産運用が重要です。
5. bitFlyer（ビットフライヤー）取引所の概要
bitFlyerは2014年に設立された日本発の暗号通貨取引所で、東京に本社を置き、金融庁の登録を受けた正規業者として高い信頼性を誇ります。取り扱い通貨にはビットコイン（BTC）、イーサリアム（ETH）、リップル（XRP）など主要なアルトコインが含まれており、日本円建てでの取引が可能なため、初心者にとっても使いやすいインターフェースを提供しています。
bitFlyerの大きな特徴として、セキュリティ体制の強固さが挙げられます。顧客資産の大部分をホットウォレットではなくコールドウォレットで保管しており、不正アクセスやハッキングに対する防御策が徹底されています。また、本人確認書類の提出によるKYC（顧客確認）プロセスを導入しており、反社会的勢力の排除と取引の透明性確保に努めています。
トレーディング機能としては、シンプル注文から指値注文、成行注文まで幅広く対応しており、bitFlyer Lightningというプロ向け取引プラットフォームも提供しています。これにより、短期売買を行うトレーダーも効率的にポジションを取ることが可能です。
6. Trust WalletとbitFlyerの連携方法
多くのユーザーは、bitFlyerでETHを購入し、長期保有のためにTrust Walletへ移動させるという運用を行っています。具体的な手順は以下の通りです。まず、bitFlyerにログインし、「出金」メニューから「イーサリアム」を選択します。次に、Trust Walletアプリで確認できるETH専用アドレスをコピーし、出金先アドレス欄に貼り付けます。
出金手数料はbitFlyerが定める額（変動あり）がかかり、反映まで数分から10分程度かかります。出金リクエスト後は、メールまたはSMSによる二段階認証（2FA）が必要となるため、あらかじめ設定を済ませておくことが大切です。Trust Wallet側で入金が確認できれば、資産の移管は成功です。
逆に、Trust WalletからbitFlyerへETHを送る場合も同様に、bitFlyerの入金アドレスを取得し、Trust Walletから送金操作を行います。取引所側で入金確認が取れれば、口座残高に反映され、日本円での売却や他の通貨との交換が可能になります。
7. Trust Walletのメリットとデメリット
Trust Walletの最大の利点は、非保管型であることによる高いセキュリティ性です。ユーザー自身が資産を管理するため、取引所のような中央集権的リスクが存在しません。また、複数のブロックチェーンをサポートし、DAppへの直接接続が可能な点は、DeFiユーザーにとって非常に有用です。さらに、UIが直感的で、初心者でも比較的簡単に操作できる点も評価されています。
一方で、デメリットとしては、万が一リカバリーフレーズを紛失・盗難された場合、一切の復旧手段がない点が挙げられます。また、スマートフォン自体がウイルス感染している場合、キーロガーによる情報窃取のリスクもあるため、端末のセキュリティ対策が必須です。さらに、カスタマーサポートが充実していないため、トラブル発生時の対応は自己責任となります。
8. bitFlyerのメリットとデメリット
bitFlyerの強みは、日本語対応の充実と国内法規制に基づく運営による安心感です。初めて暗号通貨を扱うユーザーにとって、わかりやすいガイドラインや教育コンテンツが豊富にある点は大きな魅力です。また、JPY建てでのリアルタイム取引が可能で、円との両替がスムーズに行えるため、価格変動リスクを抑えた運用が可能です。
一方の課題として、取引手数料が他国の大手取引所と比較してやや高めに設定されている点や、取り扱い通貨の種類が海外取引所に比べて限られていることが挙げられます。また、完全なKYC要件があるため、匿名性を重視するユーザーにとっては敬遠される可能性があります。さらに、システム障害時に一時的に取引ができなくなるケースも過去にあり、緊急時の対応が課題となっています。
9. 安全な資産運用のためのアドバイス
暗号通貨を安全に運用するには、「自己責任」の原則を常に意識することが不可欠です。Trust Walletのように非保管型ウォレットを使用する場合は、リカバリーフレーズの厳重保管が最優先事項です。暗号化されたUSBメモリや専用のハードウェアウォレット（例：Ledger、Trezor）との併用も検討すべきでしょう。
一方、bitFlyerのような取引所を利用する際は、二段階認証（2FA）の導入、ログイン履歴の定期確認、不要なアプリ連携の解除などを徹底することで、アカウントの安全性を高められます。また、大量の資産を長期間保有する場合は、冷蔵庫（コールドウォレット）への移管をおすすめします。
10. まとめ
Trust Walletは、ETHを含む多数の暗号通貨を安全に保管・送信できる便利なツールであり、特にDeFiやNFTを活用するユーザーにとっては必須のアプリといえます。一方、bitFlyerは日本国内において信頼性の高い取引所として、円建て取引や初心者向けサポートが充実しており、ETHの購入や売却に最適です。
両者の特性を理解し、目的に応じて使い分けることで、より効果的かつ安全な資産運用が可能になります。ETHの価格は今後も変動が予想されますが、技術的進化や規制環境の整備が進めば、さらなる成長が期待されます。投資にあたっては、リスクを十分に理解し、無理のない範囲での長期的な視点が重要です。
今後もブロックチェーン技術の発展とともに、Walletと取引所の役割はさらに明確化・高度化していくと考えられます。ユーザー一人ひとりが正しい知識を持ち、賢く資産を管理していくことが、暗号通貨時代を生き抜く鍵となるでしょう。
